伝説のプログラマーが守り切る誠実な生き方

永遠のパソコン少年が突破した壁の先

――それを仕事にしようとは。

中島氏:それが当時は、不思議とそういう考えに及ばなかったんですよね。大学院に進んでそのまま、研究室の教授に推薦文を書いてもらって、普通に企業に「就職」したんです。ところが、入ってすぐにここは「違うな」と感じてしまいました。

それまで、自分のしたいことに没頭できる環境を選んできましたが、就職したところは、研究所と名前はつくものの、あくまで「会社組織」。その論理や、不条理に従って生きることが、ぼくには苦痛で仕方がなかったんです。その将来も、大企業なので安定ではあるものの、自分の直感が活かされないのは明白でした。

そういうモヤモヤとした気持ちを抱えながら、就職してちょうど1年と1ヶ月。ある日、何気なく新聞に目を通していると、microsoftの日本法人が立ち上げられたという新聞記事を目にしました。立ち上げメンバーには、アスキーで一緒に働いていた成毛さんや、古川さんもいました。自分としては「なんで誘ってくれないの」という気持ちで、すぐに電話しましたよ。そうしたら「大企業に就職しているし、興味ないと思った」というようなことを言われました。

確かに、アスキーのアルバイト記者時代に、ビル・ゲイツから直々に「1年間アメリカに来ないか」とオファーを貰っていたのですが、妻(当時は彼女)と念願の1対1のデートが実現しそうなころで、そちらを優先してしまっていたことがあったんです(笑)。

もちろん、今度はすぐに働きたいと伝えましたよ。「手を挙げれば自分のやりたい仕事がすぐそこにある」。問題だったのは、大学院まで進んでいて、なおかつ研究室の推薦という形で決まっていた就職先をどう辞めるか(もしくは辞めないのか)でした。研究室枠で入った自分が「合わないのでやっぱり辞めます」というのは、大学や会社側からすると裏切り行為に等しい訳ですよ。それに、世間的には安定した大企業ということで、周りの反応も自分にとって決して追い風ではありませんでした。

――それでも、「やってしまった」。

中島氏:今思えば、教授に相談もせずいきなり上司に退職願を出してしまって、「流儀」を無視してしまったことに、いささか反省がない訳ではありません。けれど、もしこの時、誰かに相談して言うことを聞いて「安定」をとっていたら、自分の「やりたい」という気持ちに蓋をしてしまっていたら……。その後の米国Microsoft社でのWindowsの開発の仕事や、今に続く起業には決して繋がらなかっただろうと思います。

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