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イリイン氏からKGBの習性を学んだことが役に立った/佐藤優の情報術、91年ソ連クーデター事件簿101

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ソ連が思想戦に敗れたというイリイン・ロシア共産党第2書記の意見は説得力を持っていた。筆者はモスクワ国立大学に留学したときの思い出をイリイン氏に話した。

──ソ連に住むようになって驚いたのは、マルクス・レーニン主義に対して人々が関心を持っていないことでした。イリインさんが若い頃からそうだったのでしょうか。

「私が学生だった1960年代は、ソ連国民はマルクス・レーニン主義を本気で信じていたよ。消費財は資本主義国に劣っていることはわかっていたが、軍事と宇宙開発ではソ連が最先端を走っていると思っていた。また教育水準もソ連のほうが西側よりも高いと思っていた」

──教育水準に関しては、今もソ連のほうが英国や日本よりも高いと思います。中等教育では数学のレベルが高く、それに落ちこぼれている生徒がほとんどいません。人文科学、社会科学に関しても、イデオロギー的制約がありますが、水準自体は非常に高い。私が学んでいたモスクワ国立大学哲学部科学的無神論学科の場合、5年制の学部を卒業するために日本の修士論文に相当する卒業論文を3本書かなくてはなりません。

「モスクワ国立大学は特別だ。あそこの学生たちのレベルは傑出している。普通の大学では卒業論文は1本書けばいい」

──科学的無神論学科の学生のほとんどが、ロシア正教徒かアルメニア教会の信者でした。熱心な正教徒は共産党員にはなりませんでしたが、コムソモール(共産主義青年同盟)には加盟していました。

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