イリイン氏の特長は、ロシア共産党第2書記という共産党高官なのに、マルクス・レーニン主義イデオロギーの呪縛から解放されていることだ。自らの利害関係を括弧に入れて、事態の推移を冷静に分析することができる。筆者はイリイン氏の冷静な分析技法から強い影響を受けた。
──イリインさん、エリツィン・ロシア大統領への権力の移行は確実とみていいのでしょうか。
「確実だ。ソ連が今後存続するかどうかよくわからないが、今生じている遠心力が、単一国家ソ連の解体に向かっていることは間違いない。バルト3国(リトアニア、ラトビア、エストニア)はもとよりグルジア(ジョージア)もソ連から独立すると思う。ほかの共和国がソ連にとどまったとしても主権は各共和国が持つコンフェデレーション(国家連合)のような形態になるだろう」
教会と国家の調和が取れた関係
──ソ連憲法では、主権国家が同盟条約を形成するという建前になっていました。共和国にはソ連からの離脱権も保障されていました。ソ連の原点回帰とはいえないのでしょうか。
「佐藤さん、それは違う。主権であるとかソ連からの離脱権とかいったものは、(米大統領だった)ウイルソンが1918年に発表した14カ条の平和原則に見られる、ブルジョア的民主主義とソビエト民主主義が価値的に等しいことを示すための偽装だ。レーニンやスターリンが当初から意図していたのは高度な中央集権国家だ。佐藤さんはソ連に何年住んでいるか」
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