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エリツィンはウクライナもロシアとみなしていた 佐藤優の情報術、91年ソ連クーデター事件簿53

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筆者は当時、日本の外交官だった。日本の外交官としての立場からすれば、ソ連共産党が崩壊の危機に瀕し、欧米と価値観を共有するエリツィン・ロシア大統領らの民主派勢力が台頭することが好ましい。しかし筆者は、政治的立場よりも政治家の人間としての生き方に興味があった。ソ連人民代議員で「黒い大佐」と呼ばれたヴィクトル・アルクスニス氏は、自らの信念と行動を極力一致させようと努力している。こういう生き方が尊敬できると思った。

キープレーヤーは2人

──午後の最高会議でヴィクトルは何を訴えるつもりなんだ。

「それについてもマサルと相談したいと思っている」

──何なりと相談してくれ。

「まず、国家非常事態委員会の活動は基本的に正しかったと主張したい。8月に新連邦条約に署名が行われれば、ソ連は事実上、解体してしまうことになる」

──ロシア共産党のイリイン第2書記も同じことを言っていた。ペレストロイカを推進したのは、社会主義国家ソ連を強化するためであって、ソ連を解体するためではないと、8月20日午後に僕と会ったときに強調していた。

「イリインと僕は考えを若干、異にする。僕は社会主義にこだわりがない。共産党など解体してしまったほうがソ連のためになると思っている。重要なのはソ連国家だ。新連邦条約が発効すると、事実上、ソ連は解体プロセスに入る。いったんこのプロセスに入ると、それを戻すのは難しいと思う」

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