ソ連人民代議員のヴィクトル・アルクスニス氏はレストランに入ると店内を見渡した。見るからに安物だが、中国製の大きなつぼが置いてあり、天井からちょうちんがぶら下がっている。テーブルのついたては黒色で、貝の細工が付いている。
「こんな所に本格的な中華レストランがあるなんて知らなかった」とアルクスニス氏は言った。
「インテリアはちぐはぐだけれど、味はモスクワでいちばんおいしいと思う」と筆者は答えた。
フロアマネジャーが「佐藤さん、どうぞこちらに。今日は珍しい人と一緒ですね」と言った。
「誰だかわかるか」
「もちろん。ヴィクトル・アルクスニス大佐です。いつもテレビで見ています。ヴィクトル・イマートヴィッチ(ミドルネーム)、『金龍』へようこそ!」
「ありがとう」とアルクスニス氏は答えた。
クーデターに関与して「お尋ね者」かもしれない彼を連れてきて面倒に巻き込まれるのではないかと、フロアマネジャーも思っているはずだ。しかし、そんなそぶりはまったく見せなかった。
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