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ソ連共産党エリートは社会的混乱を予測していた 佐藤優の情報術、91年ソ連クーデター事件簿㊼

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ソ連共産党中央委員会国際部に勤務するチトフ氏のクーデターに対する洞察が非常に興味深かったので、その内容も公電で報告した。

3.今次クーデターに対する評価。

国民は独裁を望んでいないというのは事実である。しかし、社会に貧富の差が広がっており、物価値上りや今秋の収穫に対する根強い不安があるのも事実であり、秩序と規律の強化を求める声も強く、国家非常事態委員会の主張の一部にはかなり多くの国民が共感していた。

現に19日に最高会議に参集した市民は数千人に過ぎず、軍の一部がエリツィン側に付いたということが明らかになって、参集する市民の数が数倍になったことからも市民の動揺が示されている。(当方より、22日、23日のエリツィンの大統領令は必ずしも法に則っているとは思われず、今度は民主派の「独裁」が生じる可能性があるのではないかと水を向けたところ、)御指摘の通りである。マスコミの自主検閲が始まっており、「エ」批判はタブーとなっている。

しかし、「エ」よりも独裁的傾向を有しているのはハズブラートフ最高会議議長代行で、前回の最高会議で「ハ」の最高会議議長就任が承認されなかったのは、代議員が「ハ」の否定的性格を嫌った故である。勢い付いた民主派を押さえる「右翼バネ」が存在しなくなってしまったので、情勢は一層先鋭化する。

事態が流動的であり、偶然に作用される要素が大きいため、現時点で予測をするのは困難であるが、軍、KGB(注:国家保安委員会)が自信を失っているので、治安が極端に悪化することは避けられない。一番心配なのは経済の混乱で、極端なインフレの進行と今秋の収穫が正常に行なわれないため今冬から春先にかけて、国民生活が極端に低下することである。

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