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「ゴルバチョフ政権は続く」日本大使館の認識不足 佐藤優の情報術、91年ソ連クーデター事件簿㊺

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ゴルバチョフ・ソ連大統領が改革派と守旧派の間で動揺していたために国家非常事態委員会にクーデターを起こす隙を与えたとモスクワの日本大使館はみていたが、表面的な感想だ。ゴルバチョフ氏は、有機的に成り立っているシステムがどういうものであるかを皮膚感覚で理解していなかった。

マルクス・レーニン主義(当時のソ連の言い方では科学的共産主義)はシステムで、それは単一の世界観によって形成されている。例えば、無神論はマルクス・レーニン主義のシステムに組み込まれている。にもかかわらず、ロシアへのキリスト教導入千年祭に当たる1988年にゴルバチョフ・ソ連共産党書記長はロシア正教やイスラム教のトップと会見し、宗教政策を大幅に緩和した。その結果、マルクス・レーニン主義から「生き死に」の原理を示すという宗教的要素が希薄になっていった。

市場経済は資本主義システムの一部を成している。社会主義的市場というように部分的に市場経済を導入して、社会主義体制を強化することはできない。また少数民族の文化復興をゴルバチョフ書記長は奨励した。しかし、文化もシステムだ。バルト3国の民族文化に政治が含まれているという単純な事実に、ゴルバチョフ氏を含むペレストロイカ派の官僚は気づかなかったのである。

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