天才プログラマーが予測する「AIが導く未来」 人間の「なんとなく」は合理的に判断される

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天才プログラマーが本質を語ります(撮影:梅谷 秀司)

『週刊東洋経済』8月21日発売号「教養としてのテクノロジー」に連動したテクノロジー(テック)賢人へのインタビュー4回目は、AI(人工知能)ベンチャー・UEIの清水亮社長。清水氏は高校時代からコンピュータ雑誌でプログラミング関連の連載を持ち、大学在学中には米マイクロソフトの次世代ゲーム機の開発に携わったという“天才プログラマー”(独立行政法人情報処理推進機構が認定した公称)である。近年はAIの研究開発にのめり込んでいる清水氏に、AIをめぐるド素人な質問をぶつけてみた。

「機械学習」と「深層学習」の違い

――AIの発展は、マシンラーニング(機械学習)とディープラーニング(深層学習)という2つの技術によるそうですが、この2つの違いが正直よくわかりません。

マシンラーニングっていうのは、統計的に最適な答えを見つけるのが主な目的です。たとえるなら乗換案内やカーナビ。あれはどの経路が一番短いかという最適化問題です。でもディープラーニングにとって、最適化はあんまり意味がない。

『週刊東洋経済』8月21日発売号(8月26日号)の特集は「教養としてのテクノロジー」です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

――じゃあディープラーニングが得意なのは?

いちばんの特徴は、コンピュータがこれまで持てなかったセンスや感覚が生まれたということです。

センスとか感覚って、人間でも難しいじゃないですか。たとえば管理職が新入社員に「態度が悪い、失礼だぞ」「ビジネスマナーがなっとらん」といったことを注意して理解してもらうのは、非常に難しい。「どこが悪いんですか」みたいな反論をされると困っちゃうでしょう。「おまえのメールは一見丁寧だが慇懃無礼だぞ」と言うときの「何が慇懃無礼にあたるのか」という感覚は、ロジカルに言語化するのがすごく難しい。そのセンスがある人にはすごく簡単なのにね。

だから管理職が理性でもって注意したのが、「あの人は彼が嫌いなんだ」というふうに受け止められて、話がややこしくなる。世の管理職のストレスのほとんどがこの手の難しさに起因すると思いますよ。

ところがディープラーニングを使うと、何が「態度が悪い」ことなのかもコンピュータで判断できるようになるんです。態度が悪い人ってこんな感じだよね、というコンセンサスがデータとして取れる。つまり、「態度が悪い」という指摘が、ある種客観的な指標でもって示せるわけですよ。そうなると、「お前の態度が悪い、とAIが言っている」と言えるので、問題と人間関係を切り分けられる。AIに責任をなすりつけられるのです。素晴らしいですね。

注意されるほうも、「僕の態度のどこが悪いのですか」と聞き返したら、こいつ反抗してやがる、と誤解されがちでした。そういうのもなくなって、「AIが態度を悪いって言っているから、どう改善するか一緒に考えようか」となる。

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