天才プログラマーが予測する「AIが導く未来」

人間の「なんとなく」は合理的に判断される

――清水さんはテック(テクノロジー)に精通していますが、普通のサラリーマンがテックセンスを磨くにはどうしたらいいですか。

それはテックに飛び込むこと、浴びることです。浴びないやつは絶対に分からない。スマートフォン作って売ろうという人が、スマホを買ったり自分で選んだりしたことがなければ、スマホのことが分かるわけない。本を読まないやつが、面白い文章を書けるわけがないのと同じです。まあ、1回は書けるかもしれないですよ。文章が下手過ぎて珍しいとか、こんなに下手な文章を出版していいんだ、という驚きで売れるとか。でも1回だけです。

「ハードが手元にある人」が勝つ

――飛び込むというのは、ガジェットを買ってみるとか、使ってみるとか、そういうことですか。

それは大事。テックは結局、ハードが手元にある人間が勝つから。

僕は学生のころ、めちゃくちゃ高いグラフィック・ボードを買いました。買わないと分からないし、問題も指摘できない。そして誰も買ってないものを買うほうが強い。エプソンのロカティオっていうPDA(携帯情報端末)がありました。多分、世界で初めてGPSを内蔵したPDAで、地図を閲覧できたり、記録できたりしました。周りの誰も買っていないんですが、僕は買った。そうすると、地図を使ったインターネットサービスがどういうものなのか、どんなインターフェースがいいのかってことが誰よりも早く想像できるようになる。

ソフトの差って何かというと、人間のイマジネーションの差でしょう。でもイマジネーションの差って、思っているほど大きくない。

――イマジネーションとソフトで差別化する、という考え方が一般的ですよね。

それは、そう言っておかないと自分の仕事がなくなっちゃう人がたくさんいるからです。でも、ライゾマティクス(メディアアートの集団。ブラジル・リオ五輪の閉会式で、プロジェクションマッピングを使った東京五輪のプレゼンテーションを演出した)がもしプロジェクションを使わなかったら、と考えてみてくださいよ。平凡な映像プロダクションでしかないでしょう。プロジェクターなり何なり、飛び道具があるからライゾマは初めて価値を発揮できるんです。

イマジネーションだけでやろうとすると、ディスプレイから出られない。ディスプレイの中からリアルに飛び出すためには、ハードがないといけない。アラン・ケイ(米国のコンピュータ科学者兼教育者、パソコン開発に大きな影響を及ぼした人物)が言ったように、ソフトについて真剣に考える人は、ハードを作らないといけない。ハードありきでモノを考えたほうが、うまく見極められる。そして一番手っ取り早いのは、ろくでもないハードを買うことです。

――みんなが買わないようなモノを買う。

マイクロソフトのHololens(ホロレンズ)を買って、それがいいって言っている人はほとんどいない。だからこそ、それを手にすればキラーアイテムになる。値段は30万円もするし、明らかに今は何の役にも立たないんですけど、あれを使ってみることでチート(ずる)になって特別扱いされる。落合陽一君なんか、ホロレンズをかけて外出している。恥ずかしいし格好悪いから普通はやらない、そういうことをやるのが意味がある。

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――シャープのロボホンとソフトバンクのペッパーはどうですか?

僕はどちらも買っていない。理由は同じで、どちらも面白いけど、僕向きじゃなかった。ペッパーを買って何をするか、まったくイメージが湧かなかった。手元にあったとして、はて、何をさせるか?というイメージの湧かなさを考えると、100万円以上(注・本体とサービス料などを合わせたトータルコスト)という値段は釣り合わない。あ、中古のペッパーってあるのかな?安いのかな。

――安ければ買う?

10万円ぐらいだったら買うよ!

――調べましょう!

(インターネットでしばし調べる)……あった。70万円だって。

――ちょっと高いですね。

でも、70万円だったら買える。買うか? いや、やっぱりいらないよな(笑)。

『週刊東洋経済』8月21日発売号(8月26日号)の特集は「教養としてのテクノロジー」です。
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