天才プログラマーが予測する「AIが導く未来」

人間の「なんとなく」は合理的に判断される

――どうしてディープラーニングだと、センスが生まれるのですか?

理由は分かりません。それは「どうして人間には知性があるのですか」と聞くのと同じぐらい難しい。複雑系なんです。

――文脈が分かるってことですか。

文脈も分かるけれど、本質的にはそこじゃない。「なんとなく」が分かる、って言えばいいでしょうか。たとえばある生き物をみて、猫かもしれないし、犬かもしれない、さあどっち?という識別ができるのです。

「確たる答えはないけど、なんとなくこう」

――耳があってビゲが生えていてモフモフしている、というロジックじゃ犬と猫は識別できませんものね。

言い方を変えると、今までのコンピュータによる最適化の能力では、答えは基本的に1つしかない。それがディープラーニングだと、答えがそもそもないのです。「確たる答えはないけど、なんとなくこう」っていうのがディープラーニングです。

清水亮(しみず りょう)/電気通信大学在学中に米マイクロソフトの次世代ゲーム機向けOSの開発に関わる。1998年にドワンゴ入社、2003年に独立。2005年に独立行政法人情報処理推進機構から天才プログラマー/スーパークリエイターとして認定される。『教養としてのプログラミング講座』などプログラミングに関する著書が複数ある。(撮影:梅谷 秀司)

――アルファ碁がプロ棋士を破ったのも同じ仕組みですか。

そうです。アルファ碁も絶対勝てる手を打ったわけじゃない。「何となくここに打ったら勝てそう」っていうのをやっているわけです。

――「なんとなく」がわかるAIは、実際に社会ではどう役立ちますか。

いろいろあるんだけど、人事業務へのインパクトが大きいと思う。「この人はなんとなくパワハラしそう」「入社1カ月で辞めそう」というのがあらかじめ分かるから。

――採用する前でも分かっちゃう?

分かっちゃう。そうすると、多分採用がめちゃくちゃ楽になるはずです。

結局、就職してうまくいかないのは、マッチングの不全なんです。マッチングがちゃんとうまくできていれば、企業も転職者・就活生もお互いハッピーなはず。なのに、今はマッチングがうまくいっていなくて、企業と個人がお互いだまし合っている。「うちに来るとハッピーですよ」「私を選ぶといいですよ」というメッセージを伝えあっているのに、実際に採用してみたら全然ハッピーじゃなくて、就職して1年で辞めるなんてことが起こる。だって、思ったのと違うから。自分がやりたい仕事と違うから。

特に学生は、有名な会社を選びがちです。でもその根底にあるのは、「有名な会社に入りたい」ということじゃない。知らない会社に行くのが不安なのです。だから優秀な東大生が、大して有名でもないアルバイト先やインターン先にそのまま就職しちゃう、ということが起こるのです。

企業が全部、自動車会社や航空会社のように有名かつ仕事の中身もみんなが知っている、という状態ならわかりやすい。でもそうじゃないから電通とかリクルートのような、仕事の中身はよく理解されていないが、自社の存在をアピールするのがうまい企業に学生が集まる。メディアが伝えるいびつな情報によって就活の悲劇が起こるのです。

次ページそこにAIが入ると・・・・・・。
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