達成感を支えに働く人の「突然死」リスク 頑張りすぎに気が付かない「隠れ疲労」の恐怖

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――足が疲れた、目が疲れたと個別に疲れが生じるのではなくて、すべて脳の自律神経の疲れだと。

そう、だからきちんと足し算すべきなんです。ただ、根を詰めて仕事した、すごく頑張ったなど、テンションが高いときは、疲労感のマスキングで低めに見積もってしまう。そんな調子で会社帰りにリフレッシュしようとジムに寄るとか皇居の周りを一周走るなんて自殺行為です。サウナに行くのも激しい体温調節で自律神経を頑張らせてしまう。「飲んで疲れを吹き飛ばそう!」というのも肝臓に負担をかけ、新たな疲れを加えるだけの行為です。

疲労は質のよい睡眠でしか回復しない

梶本修身(かじもと おさみ)/1962年生まれ。大阪大学大学院医学研究科博士課程修了(医学博士)。2003年から産官学連携「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者。大阪市立大学大学院疲労医学講座特任教授も務める。『すべての疲労は脳が原因』など著書多数(撮影:尾形文繁)

――疲れの足し算とは具体的にどうすればいいんですか?

主観でいいので偏差値的な考え方で普段を50としたとき、今日はいつもより頑張ったから60とか、上司に詰問されストレスを感じたから70とかイメージしてみる。会議で自分がプレゼンしている最中はテンションが高まっていて疲労を感じなくても、終了後は疲れているはずなんです。そうしたときは自律神経の負担を気遣って早く寝ようとか心掛けてもらいたい。

疲労を自覚していなくても、実際は疲労が起こっているはずだという感覚を持つことが大事です。疲労は質のよい睡眠でしか回復しない。肉体はもちろん、精神的なストレスが加わっているときほど自律神経を休めてあげてください。

――疲労は発熱、痛みとともに体からの「3大生体アラーム」だと。発熱や痛みには対処しても、疲労については軽視しがちですね。

そうですね。日本には「お疲れさま」という文化があって、疲れることを美徳化するフシがある。疲れないと仕事をしたことにならないとか、評価しないような風潮がありますよね。それがお疲れさまという言葉に表れている。今日はよく頑張ったなと疲れた自分を褒めたりするでしょ。海外にはお疲れさま文化などない。疲れたことを評価などしないでしょ。アメリカでは60%の力で働き70%の成果を出すよう求める。実際そのほうが効率的で、「グッドジョブ!」と結果を評価する文化ですよね。

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