達成感を支えに働く人の「突然死」リスク 頑張りすぎに気が付かない「隠れ疲労」の恐怖

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――日本人が称賛する集中力神話も、隠れ疲労を招くリスクと。

1日のスパンで見たとき、作業効率を上げたいなら1つの物事に集中するのは逆効果。集中力は本来1時間から1時間半しか持続しません。その後の5〜6時間はパフォーマンスが極端に低下する。ではどうするか。1つのことに集中して脳の特定部位だけを酷使せず、脳全体をバランスよく使い負担を分担することです。オンとオフのバランス、上手な手抜きが脳の疲れを軽減する仕事術です。

今日やる仕事を書き出し、重要度のタグ付けをする。体調や疲れ具合に応じて、優先順位の低いものは明日に回す。1つの仕事に飽きたら、脳の違う場所を使う種類の仕事に移る。“飽きる”という感情自体が脳の疲労サインなのです。

疲労を自覚していなくても

――まずは疲れをため込まない習慣づけが必要ですね。

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隠れ疲労の現象として最初に起きるのが体のだるさと眠気です。それと普段楽しめていたことに飽きやすくなる。これは、これ以上同じ箇所に負荷をかけないでくれ、という脳からの信号です。電車に乗ってすぐ眠り込んでしまったら、それは脳が本来備える公共の場での警戒を捨て、「今すぐ休息を」と強制的に意識をシャットダウンした状態。普段歩くところを今日はタクシーに乗ってしまおうか、とふと思ったりする。こうしたことは隠れ疲労の氷山の一角として出てくる症状です。疲労を自覚していなくても、自分の行動の中で、何かしら出てくるところは逃さないようにしてもらいたい。

――直感や衝動に耳を傾ける。

はい。疲れを自覚する前に何かで現れてくることが結構あります。疲れを自覚するのは意識に上ってくることだけど、衝動というのは意識に上っていないデータを整理したもの。だから衝動は、もっと膨大な情報を処理した結果出てくる情報なんです。その情報のほうが実は貴重だったりする。衝動を無視するのではなく、どうしてそんな衝動が生じたのかにちょっと意識を持っていくと、もしかしたら自分は疲れているんじゃないか、と気づけるのではないでしょうか。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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