仕事のできない人は数字の読み方を知らない 「当社比120%」に踊らされていませんか
順番に見ていくと、どの表現から数字が使えなくなるかが見えてくる。
◆比例尺度……年齢、重さ、距離、絶対温度など、「大きいか小さいか」「どのくらい差があるか」「比はどれくらいか」が数字で表せる尺度。
「60歳は20歳より数字が大きく40歳の差があり、3倍の数字だ」という説明ができる。
◆間隔尺度……摂氏や華氏で表す温度や日付、西暦など、「大きいか小さいか」「どのくらい差があるか」は数値化できるが、「比」(何倍か)については数値化できない尺度。
たとえば、摂氏30度は10度より高くて、差は20度だが3倍暑いわけではない。足し算、引き算はできるが、他と比べて「○倍高い」といえない尺度である。
◆順序尺度……「大きい、小さい」はいえても、「どのくらい大きいか、小さいか」がいえない尺度。
「あのアイデアよりこのアイデアのほうが面白い」という比較はできるが、仮にその順番を無理やり数字に置き換えたとしても、足し算も引き算もできないので、せいぜいどっちが「よいか悪いか」しかいえない。
◆名義尺度……人の名前、血液型、星座などがこれに当たる。名前が付いていて区別はできるが、大きいか小さいか、差はどれくらいか等いっさい数値化できないので優劣はつかず、比較もできない。
4つの尺度のうち、本当に数字で表せるのは2つ目の「間隔尺度」まで。すなわち数字とは、「すべてを表せる万能のもの」ではなく、「何倍」と表現したほうが効果的なので比例尺度が乱発されている。
「エビデンス」っぽく見える数字
「数字で表せると説得力が増す」という信仰は根強く、特に「他者と比較して、こちらがどれだけ優勢か」を示す比例尺度に無理やり落とし込んでいるケースは多々あり、われわれも油断していると信じ込んでしまいがちなので注意が必要だ。
「この商品はほかの製品の3倍効果がある」「100%の品質保証」など、「比例尺度でしか使えないはずの数字表現」をよく目にする。
たとえば衣料用洗剤の新商品が発売されたとする。そのパッケージには、こんな宣伝文句が書かれているとしよう。
「新製品の汚れ落ちは、当社比120%」。
この「120%の汚れ落ち」という数字の実態が以下のようだったらどうだろう?
実験として、服に10gの汚れをつけたとし、従来の洗剤だと1g落ちたところ、新商品だと1.2g落ちた。この場合、確かに「汚れ落ちは当社比120%」となる。しかし、10gの汚れのうち、大部分の8.8gは服に残ったままなのだ。
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