40代の”成功”と”失敗”を分かつもの グローバルエリート特別対談 with 城繁幸(その1)

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40歳になったら、いつクビになっても不思議でない

ムーギー:私の周囲の事例に限った話で一般化するわけではないですが、まず転職のスピードがとんでもなく速いですよ。特に中国の友人は転職回転率がものすごく速い。会社に対するロイヤリティが低く、日本よりそうとうドライです。やっぱり昔から“お上”が面倒を見てくれるなんてメンタリティの国じゃなくて、“お上”はとんでもないことをするものだというメンタリティだからかもしれません。

:国民はお上にいじめられていますからね。

ムーギー:中国の“お上”はエリート中のエリートでたいへん優秀であり、善しあしがありますが、中国の方々は自分の組織に対する忠誠心ではなく、警戒感のほうが強いのかもしれません。こんなことを言うとメディア的には面白いけれど、僕が中国人に怒られるな。今の発言、城さんが言ったことにしといてください(笑)。

でもそれが、この競争の激しい業界におけるリスクヘッジだと思うんですよね。いつクビになるかもわからない、賢い猛者たちが戦う環境では、セーフティネットなんか誰もくれないのだから、会社で働いている間に、人脈を作るなり投資家を探すなりして自分でセーフティネットを作るのは、当然しなきゃいけない危機管理なんですよ。30歳ぐらいならまだ意識しなくていいけれど、さすがに40歳になったら、いつクビになってもおかしくない。

特に会社がリストラをするときって、別に本人がバカだからとか、パフォーマンスが悪いからという理由でクビを切るわけじゃないことも多い。どんなに仕事ができる人でも、政治的な理由で解雇されることなんかしょっちゅうです。

たとえば「こいつはナンバーツーで、俺のポジションを脅かすからクビ」とか、「こいつがいい仕事を持ってきてディールダン(取引終了)したけれど、こいつがずっといると、エグジットしたときにそのディールの分け前をあげなくちゃいけない。今のうちにクビにしといたら分け前が全部自分のものになる」とか、そういうえげつない理由もある。だからクビになるのは、全然、異例の事態じゃない。その前提の下でキャリア設計することでしょうね。

優秀な人を引き留めるため、ここまでやる

:これも聞きたかったんだけど、さっきキムさんが、日本人以外は愛社精神なんかなくて、バンバン転職するのだという話をされていましたよね。でもいろんなコンサルティングファームが世界各国の従業員にアンケートをとると、愛社精神がいちばん低いのは日本人なんですよ。逆に中国人とかアメリカ人が高かったりする。これをどう見ます?

ムーギー:いえいえ、どこの国の会社でもいい会社には愛社精神のある人はたくさんいます。ただ言いたかったポイントとしては、いわゆるトップティア(業界トップ集団)では、優秀な人材確保のためにケタ違いの努力をしているんですよ。

知っていますか、たとえば某BBM(ボスコン、ベイン、マッキンゼーのトップティア・コンサルティングファーム3社の総称)の一角なんか、海外オフィスははっきり言ってただでさえ休みが多くて、夏は1カ月近く休むんです。それでも優秀な人が「やっぱりコンサルティングはしんどいから辞めたい」と言い出すと、それをつなぎとめるために、「あと1カ月、いや2カ月休みをやる。その間は給料7%カットでいいだろう」みたいに、優秀な社員をつなぎとめるために、新たな雇用形態を作ったりするんです。

ちなみに優秀なシングルマザーが子育てと仕事を両立できるよう、自宅勤務や週に3回の勤務とかで働くコンサルタントもザラです。つまるところ社員のいろんなニーズにフレキシブルに対応して、優秀な人にとにかくとどまってもらおうとしている。

それに比べて日本の場合、「前例がないから」「ルールはそうじゃないから」「上司よりも働かないとはナニゴトだ」ということで、ルール至上主義になってしまっている。ルールが何のためにあるかといえば、会社のパフォーマンスを高くするためなのに、本末転倒なんですよ。だから海外のほうが愛社精神が高いという結果が出るんじゃないでしょうか。

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