40代の”成功”と”失敗”を分かつもの グローバルエリート特別対談 with 城繁幸(その1)

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サラリーマン根性がまだまだ強い

ムーギー:40歳を超えると、転職先にとっても明示的なメリットがないと厳しいでしょう。単にコストカットとかだけじゃなく、その人がお客を引っ張ってくることができて、プロフィットを伸ばせる人じゃないと、会社も欲しがらないところがありますよね。

城繁幸(じょう・しげゆき)
作家、人事コンサルタント
1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通に入社。人事部門にて新人事制度導入直後からその運営に携わり、同社退職後に執筆活動を始める。雇用問題 のスペシャリストとして、人事制度、採用などの各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各メディアで発信中。最新著書に『若者を殺すのは誰か?

:まあ、そうですね。面白いのは、僕の友達に学生時代、バリバリに保守的だったやつがいたんですよ。「最初に入った会社の格で人生が決まるんだから、財閥系がいちばんだ」と言って日系の金融機関に入った。外資に転職なんかとんでもないと。

ムーギー:いや、十何年前は本当にそうでしたよね。

:もしくは都銀とか政府系の金融機関がいちばんだと。ところが今や政府系はものすごくたくさん統廃合したから、結果的に外資に行かざるをえなかったみたいなやつがいっぱいいるんですよ。それがだんだんエグジットの時期を迎えてきている。もっとも僕はあの業界で40歳近くまで生き残っているだけで、結構すごいと思うけど。だけど正直言ってあと5年もいないだろうと、飲むたびにそういう相談をされるんですよ。

ムーギー:この業界は、つねに賢くて野心的なやつがどんどん入ってくる。しかもトレードとかインベストで勝つかどうかは、今までの経験とはあまり関係がなかったりもする。別に10年、20年いたからといって、3年目のやつよりも強いかといえば、そういうわけでもない。だから、構造的に長くはいられない業界なんですね。

:だから、そういう流動性のある業界に関して言えば、今年40歳になるやつは、独立するか、どこか事業会社に潜り込めたら潜り込もうと就職活動していますよ。

ムーギー:なるほど。僕の周りの独立する人を見ていると、今までいい給料をもらってきたので何年かぐらいは自分を養っていけるだけのシードマネーを持っている。かつ、働いていたときのトラックレコード(実績)と人間関係があるので、いざ独立するとなったら、5億円くらいなら出してくれる投資家がいる。やはり40歳まで働いてきたからには、これくらいでありたいですよね。逆によろしくない働き方というのは、とにかく猪突猛進で会社のために頑張ります、みたいな伝統的なかたち。

:日本人は普通、後者ですけど(笑)。

ムーギー:そうなんですけどね。やはり中国人とか香港で働いている人を見ると、会社で働いている間に知り合った人脈を、自分のビジネスのために拡大しようというメンタリティが非常に強い。どこかのファンドで働いているんだけど、そこで知り合った投資家や、競合他社にいる自分の友達と一緒に、いつの間にか新たなファンドを中国で作っていたりする。「自己実現に必要なステップとしての今の勤務」という位置づけを明確に持っている人が多いのです。でも日本はどちらかと言えば、この会社で頑張って出世して、というサラリーマン根性がまだまだ根強い。

:いや、それはもうたぶん99%の人が持っています。僕、逆に聞きたかったのだけど、やっぱり中国人やアングロサクソン系と日本人は違います?

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