「米ぬか繊維」は足のガサガサの救世主だった サッカー用靴下の大手が開発した機能性繊維

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その一方で、実は鈴木社長の実家は、1ヘクタールでおコメを栽培する兼業農家です。精米時に出るぬかは、漬物ぐらいしか使い道がありません。廃棄前の大量に積み上がった米ぬかを見て、鈴木社長は常々「もったいないなぁ。これを使って何かできないか」と感じていました。

老化した角質を除去する成分がある

あるときふと、子ども時代の記憶がよみがえります。「小学校の頃、廊下をぬか袋で拭いたらツルツルになったな」。そういえば母親も、ぬか床で漬物を作っていたので手がきれいだった、と思いました。それなら米ぬかを素材に使った靴下を作れば、足がツルツルになるのでは、と考えました。

おコメ(資料提供:鈴木靴下)

米ぬかは、玄米の重量のうちわずか10%ですが、しかし全体の約75%に相当する栄養成分が含まれています。中でもγ-オリザノールとフェルラ酸という天然成分が注目されています。γ-オリザノールは、美と健康の源といわれ、皮膚の血行をよくして皮脂の分泌を促進し、肌の表面を保護します。さらに紫外線をブロックして、老化した角質を除去する作用があります。またフェルラ酸は、おコメのポリフェノールとも呼ばれ、美白効果があり抗菌作用があります。

江戸時代、銭湯ではぬかが売られ、ぬかを入れる袋も番台で借りられました。ぬか袋で体をこすると、汚れがきれいに取れ、肌もしっとりすべすべになります。ぬかに、保湿効果、美白効果、肌のきめを整える作用があることを昔の人は経験的に知っていたのです。

おコメは、私たち日本人には食生活に欠かすことのできない食べ物です。そして世界で半数以上の人々がおコメを主食としています。米ぬかは、人類がおコメを食べるかぎりなくならない無限の天然資源といえます。そう考えた鈴木社長、ぜひとも米ぬか靴下を製品化しようと奮い立ちました。

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