高級ミニカーに魅せられた男の並外れた情熱 知らなくてもいいが知ろうとしないのは罪だ

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――大人にしか追求できない、贅沢なこだわりが詰まっています。

小林豊孝(こばやし ゆたか)/Spark Japan 編集者。1963年、東京・浅草生まれ。幼少期よりスーパーカーに魅せられるも、大学までは陸上競技一筋の体育会系。大学卒業後、インテリアメーカーを経て、クルマ雑誌の編集者、趣味の雑誌、ムック本を手がける出版社と、編集畑を歩む。二十数年の編集者生活で培った審美眼を活かし、モデルカーブランドSparkの日本進出を機に、Spark Japanとして業務に参画している

小林氏:そんなSpark Modelを求めて、はるばる遠方からお越しになる方も少なくありません。このショールームでは常時1000台以上を展示していますが、さらに隣には、そうしたモデルカー愛好家のための会員制ラウンジも備えています。すでにリタイヤして趣味の世界に没頭されていらっしゃる方から、普段の仕事の合間を縫ってお越しになられる方まで、主にスポーツカー世代と呼ばれる、車に憧れを持った“元少年”たちが、集まり交流できる場にもなっているんです。

私自身、幼い頃「車」に夢を見た“元少年”の一人です。ただ、憧れを抱きつつも、多くの人たちと同じように一度は普通に会社に就職し、その後、どうしても車の世界への憧れを捨てきれずに、好きを仕事にしてしまった人間なんです。まったくの異業種から飛び込んで、雑誌編集者として車の世界を深く知るようになり、さらに定年を待たずして脱サラしてしまい、こうして憧れだった車の世界で仕事をさせてもらっています。ここに至るまで、車をはじめ、さまざまなものに興味を持って生きてきましたが、好奇心で進んだ先には、いつも今に繋がる「次」の世界へと引き上げてくれる方々の存在がありました。

「憧れの原点」は、父の姿

小林氏:「車」そのものへの憧れの原点は、私の父でした。父は「いすゞ自動車」に勤めていて、特に東京から工場のあった栃木県に転勤になってからは、工場長だった父の職場を見る機会に恵まれ、車への想いもますます強くなっていたように思います。ちょうど、スーパーカーブームと呼ばれる時代が私の幼少期なのですが、当時流行っていた漫画『サーキットの狼』を友達と回し読みしては、互いに覚えたセリフを披露していましたね。車雑誌の『モーターマガジン』や『カーグラフィック』で紹介される、「フェアレディZ」や「ポルシェ」などの車に憧れ、よく道路(ほぼあぜ道でしたが)を眺めては、そうした憧れの車が通らないかと待っていたものです。もちろん栃木の田舎道ですから、遭遇することはなかったのですが(笑)。

――好きなことに、とことんのめり込んでいます。

小林氏:車に限らず、「好き」と思うことについてはとことんのめり込まないと気が済まなかったんです。車の他に、蒸気機関車にも興味がありましたし、切手ブームがあればその収集に凝ったりと、要はミーハーだったんだと思います。東京・晴海で開かれるスーパーカーイベントの招待券を手に入れるために、応募券がついた歯ブラシや歯磨き粉を親に頼み込んで大量に買ってもらったのを覚えています。父は、私が小学校6年生の時に亡くなったのですが、今でも、いすゞの「117クーペ」や「ベレット」を見ると当時の情景が浮かんで懐かしくなりますね。

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