取材したRさんは地元で人気の民間企業に1年勤務。それなりに周囲からは期待されていたようですが、公務員試験を受けて、地元の役所に転職。会社は「当社のほうが生涯年収は断然いいよ」などと待遇面の魅力を説明して、引き留めたようですが、意志が固く、転職したようです。
その理由を聞いたところ、本気で地域貢献をしたいからとのこと。民間企業に就職してみると、目の前の仕事をこなすことで精いっぱい。もともと地元にしたいと志望動機をかかげて入社。人事部も地域貢献をするために部門を立ち上げて積極的に行っていると説明をしてくれました。ちなみに大学生で地元就職を希望する学生の約2割が、地元に対する貢献が志望動機だといいます。
長男だから、友人が多いから、とさらに比率の高い回答は多数あります。ところが、個別に取材していくと、将来に対して明確なビジョンをもった意欲的な(地元志向の)学生ほど、地域貢献に対する意欲が高いことがわかります。
地元で就職したが、地域貢献を体感できない
冒頭に登場した金融機関の若手人材や首都圏の大学から地元に戻り、地元の活性化のためのNPOを立ち上げたリーダーなど。地域に残るなら自分が将来のために立ちたい。それができないのであれば、東京や世界での仕事を選びたいと語ってくれます。それだけ、地域の将来に不安を感じつつ、その変革を自分がかかわって実現したいとの思いがあるのでしょう。
そんな熱い思いがあって、Rさんも地元で就職したのでしょう。ところが、入社してみると職場で地域貢献を体感することは困難な状態。配属された営業部門は売り上げ目標の実現のため、厳しい業績確認に追われる日々。休日も地元で行われるボランティア活動やイベントに参加する同僚は皆無。さらに、有給をつかって地元のボランティアに参加しようとしたところ、
「もっと、仕事を覚えてから行うことでしょ」
と有給取得を暗に否定されました。ちなみにRさんの会社で地域貢献の仕事にかかわっているのは社長の親族関係と、定年間近の社員数名。だとすれば、Rさんが会社で地域貢献にかかわれるのは相当に先、ないしは難しいということになります。
この現実を理解したので、すぐに退職を決意、公務員試験の勉強にとりかかったようです。そうして、翌年には合格。現在は地元の公務員としてさまざまな地域貢献活動に参加。有意義な時間を過ごしているようです。
今は、若者たちの間で情報共有が早い時代です。だとすれば、今はそこまで深刻な状況には直面していない人気の民間企業も今後は公務員への人材流失を覚悟しなければいけないのかもしれません。では、どうしたらいいのでしょうか?
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