「生理休暇」ははたして性差別的な制度なのか 低賃金や差別を助長?世界中で議論に

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生理について語る際にいまだにつきまとうタブー(写真:wavebreakmedia / PIXTA)

アカンクシャ・セダは、いつものように午前10時半に車に乗り込み、45分かけてインド・ムンバイにあるオフィスに向かった。数時間後、彼女は生理になり、「18輪トレーラー1杯分の」激しい痛みに襲われた。

以前は痛み止めの薬を飲んで仕事を続けていたが、その日のセダは上司のところへ行き、今日は休みを取ると彼に伝えた。

インドの多くの女性にとって、それは勇気のいる行動だ。生理について語るのはタブーとされ、生理痛について男性と話すのは恥ずかしいと思う人もいるとセダは言う。

しかしセダが勤務しているデジタルメディア会社のカルチャー・マシーンでは、生理痛を理由に休んでもよいことになっている。この会社では6月から「生理休暇制度」を導入し、生理中の女性は病欠や休暇とは別に有給休暇を取得できるようになった。

カルチャー・マシーンはインドでこうした制度を最近導入した数少ない民間企業のひとつだ。生理休暇が認められている国は少ないが、日本、台湾、インドネシア、韓国、ザンビアなどで導入されている。

生理休暇を認めることについては、インドだけでなく世界中で激しい論争になっている。そうした制度が広がると、その意図はすばらしいものであっても、職場での女性の活躍の妨げになるおそれがあると、専門家らは指摘している。

理解は必要だが制度はどうか

新たに休暇を加えることで、企業側が低賃金を正当化したり、女性に対する採用時の偏見を増幅させたりするおそれもあるといった批判もある。休暇によって女性が意思決定の役割を担えなくなり、昇進の機会も奪われるかもしれない。

そして、生理があるから女性は仕事に向かないという古くからある偏見をこの制度が助長するかもしれない。

「生理があることで、女性は職場で特有のハンディを負っていることを示している」と全米女性法律センターのバイスプレジデント、エミリー・マーティンは言う。

2012年の調査によると、日常生活に影響が出るほどの生理痛を経験している女性は20%に及ぶ。マーティンは、女性の生理痛について理解することは重要だが、生理休暇制度にはそれ以上の役割があると言う。生理中のすべての女性は病気であるとみなしているのだ。

次ページ生理は長い間、女性を締め出す言い訳に使われてきた
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