「東京転居で結婚できた」女性の運命の出会い 「30代・キャリア志向」がネックにならない

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自分があこがれを感じ、相手に求める「条件」。できるだけ一般的でないほうが戦略として優れている。需要が少ないところを独占的に攻めることができるからだ。普通の日本人男性は、いろんな意味で「自分より上」の女性を恋愛や結婚相手に選んだりはしない。見上げるような存在をパートナーにすると萎縮してしまうからだろう。英樹さんには「自分は頼りがいのある人間ではない」と言い切る強さがあり、綾子さんを探し当てることができた。彼女の高い学歴と職歴とを英樹さんはむしろ心強く思っている。

お互いの長所を認め合えるということ

あこがれの異性と一緒に住んだとしても、人の性格や価値観は大きくは変わらない。結婚後も英樹さんは相変わらずマイペースである。エンジニアとして働いていた土木関係の会社は辞めてしまい、インタビューしたときは求職中だった。技術職なので転職に自信があるのかもしれないが、「頼りがいのある旦那さん」を希望する女性が配偶者だったら結婚してすぐに失業するなどは考えられない。といって、英樹さんは主夫にもなれない。家事も綾子さんが指示しないかぎりは積極的にはやらないのだ。一方で、ゴミの分別にはうるさかったり、風呂掃除を始めると1時間も没頭していたりする。

「やらないときは全然やらないけれど、やるときは徹底的にやりたい。変なところにこだわりがある人なんです」

綾子さんはちょっとあきれぎみだ。イライラして「1時間も何しているの!」と怒ることもある。しかし、2人は決定的に衝突したりはしない。綾子さんに余裕と達観があるからだと筆者は思う。

「家事はほとんど私がやっているので大変ですよ。料理だって一人暮らしのときみたいに適当にはできなくなりました。でも、家にしゃべり相手がいるっていいですね。仕事でイライラしても、帰宅してガッツリと家事をやっていると気持ちの切り替えができるようになりました」

子どもに関しては、「できるに越したことはないが、2人のままで生活するのもあり」という考えで一致している。いまのところ不妊治療は受けていない。

賢くて鋭敏な綾子さんと、のんびり屋だけど男気はある英樹さん。それぞれ過去の恋愛に悔いと悲しみがある。その分だけ謙虚になれた。だからこそ、お互いの長所を認め合えたのだと思う。ちょっとしたケンカをしながらも、綾子さんと英樹さんは温かな家庭を保っていくに違いない。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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