このインタビューには英樹さんも同席してくれている。綾子さんと筆者が話している間、のんびりした表情で蕎麦前を食べる英樹さん。なんというか犬っぽいかわいらしさがある男性だ。穏やかな結婚生活を求める綾子さんにはぴったりのパートナーだったのだろう。しかも、彼には「男気」があった。
「最初に会った日の帰り道に『付き合ってくれませんか』と言われたんです。とりあえず保留にしましたが、次に会ったときにまた聞かれました。私が『結婚を真剣に考えてくれるならいいよ』と答えると、『僕もまじめに結婚を考えようと思っていた』と。その4カ月後に一緒に帰省したときも、うちの親に『結婚します』とあいさつしてくれました。おかげで両親は大喜びです」
綾子さんと英樹さんの実家は関西地方の中でも近くにある。そして、お互いが相手の両親に気に入られた。綾子さんは大きな安心感を覚えたことだろう。
英樹さんはなぜ綾子さんに熱烈なアプローチをしたのだろうか。日本酒好きだという彼に、筆者の出身地である埼玉県の銘酒を勧めながら本音を聞き出そう。
恋愛には「素朴な憧憬」も必要
「僕はキレイで頼りがいのある大人の女性が好きなんです。妹がいるのでお兄ちゃんキャラを求められがちでしたが、実際の僕は頼りがいのある人間ではありません」
淡々とした口調で謙遜する英樹さん。綾子さんと同じ婚活サイトに登録する前、7年間付き合った女性と別れた過去がある。
「僕と同い年の人で、一緒に上京して同棲をしていたのですが、ささいなことでケンカをしてしまって別れたんです。彼女が帰宅する時間がわからなかったので夕食を作らないでのんびり待っていたら、お腹をすかせて帰って来た彼女にしかられてカチンときた、程度の話です。地元から離れさせてまで同棲をして、30歳まで引っ張った揚げ句に別れてしまいました。罪悪感が募りましたね。次に付き合った人とは必ず結婚しようと決めました」
なお、英樹さんのいう「キレイで頼りがいのある大人の女性」の要素は顔立ちやファッションセンス、立ち居振る舞い、学歴、職歴だけではない。彼は年齢と身長も重視するのだ。英樹さんは自分よりも年上で身長165センチ以上を条件にして検索し、婚活サイトで綾子さんと巡り合うことができた。いつも見上げていたい――。小学生が近所の女子中学生のお姉さんにあこがれるような感覚である。
ちょっとアホらしく見えるかもしれないが、同じく男性の筆者としては共感してしまう。恋愛感情には素朴な憧憬も必要なのだ。「自分にないものを持っている人」に強く心引かれるのは、一緒にいることで自分を補完しようという本能が働くのかもしれない。ちなみに筆者は、「目鼻立ちがはっきりしていて、手足が長く、実務能力に優れ、義理人情に厚く、自意識は高くない女性」をすごく好きになる傾向がある。
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