「ホウレンソウ」は、人の成長の芽を摘む 松井忠三・良品計画会長に聞く

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──生産性を上げるのに役立つわけですね。

海外に出店していくと、日本のホワイトカラーの生産性が低いことに驚かされる。年功序列と終身雇用の制度をそのまま体現する賃金体系では、ホワイトカラーの生産性は劣勢になってしまう。劣勢をどうはねのけるか。

松井忠三(まつい・ただみつ)
良品計画会長
1949年静岡県生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)体育学部卒業。西友ストアー(現・西友)入社。92年良品計画へ。総務人事部長、無印良品事業部長を経て、2001年社長に就任。業績をV字回復させ、組織を“風土”から改革。08年から現職に就き、組織の「仕組みづくり」を継続している。

そこで、デッドラインの概念を入れる方法を考え出した。試験勉強では、試験直前に生産性がいちばん高くなる。それに倣い、18時30分以降は「自分の時間」として、まず残業をしない。

──デッドラインは就業時間だけでなくて……。

生産性を上げる一つの手法として取り入れ、それをコンピュータ上のデッドラインボードで見える化している。たとえばそこで月曜日の営業会議の内容が流され、それぞれいつまでにやるのかのデッドラインが必ず設定される。自分でも部門でもやり終えるとそれぞれ○がつく。やり遂げないとどうなるか。デッドラインが延びる。

MUJIGRAMが持っている内容は一般のマニュアルとはそうとう違う。人を育てたり、情報を共有化したり、コミュニケーションをよくするツールとして、なかなかのものだと自負している。

──社内ネットワーク上にDINA(ダイナ)システムがあります。

DINAはDeadline(締め切り)、Instruction(指示)、Notice(連絡)、Agenda(議事録)の頭文字を並べたもので、これも社内で公募して名前をつけた。

これにも参考にした会社はある。たとえばトリンプ・インターナショナル・ジャパン。早朝会議で有名な元社長の吉越浩一郎さんは親友だ。実際、在籍時に見学に行ったが、彼の机の前を1案件ほぼ3分で通過していく。デッドラインとなる翌朝までに何らかの答えを出さなければいけない。これがデッドラインという手法を学んだ最初だが、吉越さんが退任した途端、早朝会議もデッドラインもなくなった。仕組みになっていなかったからだ。部分最適ではなく、仕組みとして取り入れるべきと考えた。

コンピュータ上でも見える化ができるとの意を強くしたのは、広島の医院の事例。各エリアでの顧客開拓の進捗がコンピュータ上でわかる。その一方で、病院に行くと何かと待たされる。誰もが不満の塊みたいになりがちだが、この医院ではポケットベル状のものを渡す。受け付けや精算で3分待たされるとベルが鳴る。機微に触れる「もてなし精神」も大いに参考になった。

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