日本企業は何で食っていくのか? 伊丹敬之・東京理科大学大学院イノベーション研究科教授に聞く

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日本産業にとっての新たな「成長源」が依然として明確には見えない中ではあるが、電力生産性、ピザ型グローバリゼーション、複雑性産業、インフラ産業など、挑むべき六つの突破口があるという。

──「第三の敗戦」に遭遇、と厳しい認識です。

太平洋戦争の終戦後、それにオイルショック以来の大ピンチだが、その認識は一般には共有されていない。それぐらい厳しい状況に2008年からの日本は置かれているので、あえて第三の敗戦という造語を使った。ここで「敗戦バネ」を利かせずにどうするのだと鼓舞したい。

──なぜ敗戦と?

大まかに言えば二つの理由からだ。大変なエネルギー危機が到来した。焦点は電力だ。現場の努力で不思議にもっているのは、火力をばんばんにたいて綱渡りができているから。突発事故でも起こったら、この状態が吹っ飛びかねない。北海道電力など典型で、定期点検にも入れないぐらいのフル回転だ。これが電力の危機でなくて何なのか。

今一つは、国際金融の「液状化」。今、幸いにして円安になっているが、100円前後はリーマンショック前の水準より2割近い円高。実質実効為替レートで比較すると、主要国の中で、日本だけが圧倒的に通貨高になっている。

ドイツは本当にうまくやっている。あのリーマンショックで実体経済が最も傷んだのが日本だった。鉱工業生産指数を比較してみればよくわかる。日本の落ち込みが激しい。そして回復し始めたら30カ月後に大震災が来た。これがU字回復を頓挫させた。

──中でも11年は特筆すべき年ですか。

この二つが同時に起こったのが11年だった。この年の8月5日は記念すべき日といってよい。米国国債がトリプルAから滑り落ちた日だからだ。その日から欧州の国債が売られ始める。今まではラストリゾートが米国だった。それが岩盤ではなくなった。だから液状化現象と表現できるのだ。

その際に、すぐニクソンショックとオイルショックを思い出した。起きたのは、1971年と73年。その結果、日本の高度成長がぴたりと止まり、安定成長期に入った。今度またステージが変わるのだろうかと。それだけ、厳しいマクロ経済上の認識をしなければいけない。これが第三の敗戦に込めた造語主のメッセージだ。

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