日本企業は何で食っていくのか? 伊丹敬之・東京理科大学大学院イノベーション研究科教授に聞く

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──過去の経験を生かせるのですか。

ヒントはオイルショックの後の日本経済にある。石油に頼り切っている日本経済は、価格が5倍になって、石油多消費の産業構造は成り立たなくなった。ものの見事に鉄鋼や石油化学の生産量は横ばいとなってしまい、代わって機械産業、とりわけエレクトロニクスに中心がシフトしていった。同様のことが起きなければ、今度の電力危機において日本はもたないと思っている。それで「電力生産性」の高い産業構造に移らなければいけないと。

いたみ・ひろゆき 一橋大学名誉教授。1945年生まれ。同大学大学院商学研究科修士課程修了。米カーネギーメロン大学経営大学院博士課程修了(Ph.D)。その後、一橋大学商学部で教鞭をとる。この間、米スタンフォード大学客員准教授などを務める。『人本主義企業』『場の論理とマネジメント』など著書多数。

──電力生産性?

これも私の造語。労働生産性とは、ヒト1人が1年間にいくら付加価値を生み出せるかだが、その概念を流用して、電力1キロワット時の使用でいくら付加価値を生み出せるのか計算している。その電力生産性の高い産業構造にシフトさせる。ただ、産業別の電力生産性の判定が一筋縄ではいかない。単純計算では化学や鉄鋼といった装置産業が低い。だが、鉄鋼は高炉で銑鉄を作るプロセスで出るガスを使って発電をしている。高炉メーカーについては、これを勘案して計算しないといけない。化学産業にも似たようなところがある。

──オイルショックの後、アルミ精錬が日本からなくなりました。

鉄鋼の中でも電炉はどうするか。アルミと同じようなことが、国内電炉で起きてくる可能性がある。あの手この手で電力生産性の高い産業は国内に置いて、生産性の低い工程を電力供給がまだ日本よりましなところに持っていく。オイルショックの後で石油の消費原単位が低い産業にシフトしたから、日本は石油消費量を減らしながら、経済成長できた。それと同じことをやる。ドイツと比べると電力生産性はまだ低い。改善の余地があるわけだ。ドイツは機械産業の国だ。付加価値の高い機械を作るのが日本の生きる道と示唆しているといえそうだ。

──ピザ型グローバリゼーションや複雑性産業を薦めています。

これらも、私の造語だ。グローバリゼーションというと、ドーナツ現象や国内空洞化がうんぬんされるが、食べ物のピザを作るとき職人がするように、真ん中は絶対になくならないやり方がある。しかも、真ん中にトッピングをのせるから、そこがいちばんおいしい。サービス業の国際展開では、日本で培ったおもてなしの心のような複雑な究極のサービスまで、きっちりするオペレーションの仕組みを作るところが生きる。ここで具体的に私の頭に上った事例は、ハイブリッド車と宅配便だ。

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