日本企業は何で食っていくのか? 伊丹敬之・東京理科大学大学院イノベーション研究科教授に聞く

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──複雑性産業とは、ある産業すべてがそうである必要はないと。

繊維がいちばんいい例だ。ヒートテックは明らかに複雑性セグメントである一方で、単純なコモディティもたくさんあるし、一方でヒートテックは染色を海外でしている。繊維でなくてもある複雑性セグメントをなるべく大きくするように工夫をして、日本産業は食っていくのがいい。日本企業はこれまで複雑な製品や複雑な工程、複雑なサービスをきっちりやり遂げるための必要な技術基盤やノウハウ、オペレーションの仕組みを培ってきているし、これからも優位性はあり続けるのではないか。

『日本企業は何で食っていくのか』 (日経プレミアシリーズ)

──突破口のあと三つは、インフラ産業と中国、化学です。

インフラ産業とは日本産業全体のことだ。材料も部品も供給する、技術も持っていっていい、何なら試作品を作ってもあげる。東アジアの企業にとってのインフラ、つまり「便利屋」に、ことさらなるのだ。中国とは、丹羽前中国大使のご指摘のとおり、「住所変更はできない」ことを肝に銘じ、強くなっている化学技術についてはどの産業にも生かす手を大いに考えるべきだと思っている。

──キーコンセプトも複雑性?

そういう意味ではこの本は角度を変えた見方を提供している。そのコンセプトで見ようとすると現実が今までと違って見えるような眼鏡を授与する。そのコンセプトのなかった人がこの眼鏡で見れば、新たな見方ができる。コンセプトというものはもともとそういうものだ。

週刊東洋経済2013年6月22日

(撮影:風間仁一郎)

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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