犠牲伴う事故を自動運転車はどう判断するか 国民性によってもその考え方は違ってくる
トロッコ問題パターン1(5人はダメで1人ならOK?)
──クルマを運転中、直進すれば5人をはねて死なせ、ステアリングを右に切れば1人をはねて死なせるにとどまる。しかも、どちらもはねずに停止することはできないといった場合にどうする? “トロッコ問題”のいわばクルマ版ですが、こういう場合、自動運転車両はどういう選択をするようにプログラミングされるべきなのでしょうか?
今井猛嘉(以下、今井):まず人間が運転している場合、5人はねるのを避け、1人をはねた場合、緊急避難として違法ではありません(刑法37条1項)。これは功利主義という考えで、5人が亡くなることと1人が亡くなることの社会的損失を比べ、損失が小さいほうを選んだ場合には罰しないという考え方です。
──功利主義は公益主義ともいいますが、個人よりも国益、公益を優先させるような考え方ですね。ここだけを見ると刑法はとてもドライに思えますね。
今井:冷たい考え方に思える時もあります。これに対し、例えばドイツのカント主義のように1人でも死なせれば違法で、たとえ自爆してでも良心に従い、他者を死なせるべきではないという考え方もあります。