岩城:先述のとおり、保険は「払い済み」にすると、保障額は減りますが、今後の保険料を払わずに、契約を継続させることができます。保険は、途中で解約すると、大きく損をします。時間の経過とともに、解約返戻金は増えていきますが、早い時期の解約では、契約時に諸費用がかかるとの理由で、極端に少ないことや、ない場合もあります。それでも「払い済み」にしておけば、保障額は減額し、特約もなくなりますが、契約は継続しているので、主契約の解約返戻率は上がっていきます。余計になった保険をやめるにあたり、具合のよい処置方法として利用できます。
一定条件を満たさず、保険を解約することに
結局、大崎さんご夫婦は、私のアドバイスを聞いて、「払済保険」にしようと約款を調べてみました。すると、約款には、「途中から保険料を払わずにご契約を有効に続けたいとき」という項目があり、「払済保険への変更」が案内されていました。しかし……。
真希さん:約款に項目があったので、早速、払い済みにしてもらおうと、担当者に連絡したのですが、「できません」と言われました。理由は、約款に書いているとおり、「変更後の死亡保険が『当社の定める死亡保険金額』に満たない場合」に該当するということでした。約款にはハッキリ書いていませんでしたが、その保険金額は、だいたい5年間支払い続けると到達するそうです。
岩城:つまり、現在の解約返戻金52万円で買える死亡保険がないということですね。これが、もし1本の契約だったらどうだったのだろうと勘ぐってしまいますが、仕方ありません。
生命保険協会によると、払済保険にする最低金額などは、約款に記載したり、契約時に説明する義務はないということです。たとえこの理不尽な状況に納得がいかないとしても、なすすべはないということでしょう。
真希さん:あきらめて、解約するしかないということですか?
岩城:このまま保険料を払い続けていても、80歳を過ぎるまで、解約返戻金が、支払保険料総額を上回ることはありません。
仮に、この2つの終身死亡保険に払っている年間の保険料分(35万円)を2%で、大学進学時までの15年間運用できたとすれば、約605万円になります。いかに保険のコストが大きいかおわかりになると思います。
真希さん:高い勉強代になりましたが、思い切って解約します。しかし、とても消費者のことを考えた商品設計とはいえず、驚きました。
聡さん:保険というのは、こちらの情報不足、知識不足をうまく利用しながら利益を不当に膨らませていくシステムなのだということがよくわかりました。
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