「解雇の金銭解決」が労働者には不利な理由 使用者側が低コストでクビにできる仕組みだ

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いろいろと懸念が残ります(写真:yacobchuk / PIXTA)

不当な解雇だと裁判で認められた場合、金銭で解決する――。

厚生労働省の「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」が5月末に「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」報告書をまとめた。報告書では、「解雇の金銭解決制度」が取り上げられ、今後、労政審で議論されていくと報道されている。

解雇の金銭解決制度というと不当解雇を受けた労働者にとって職場に復帰する以外の形での救済手段を認めるものであり、労働者側にとってもメリットがあるかのように考える人もいるかもしれない。ただ、そのような制度をわざわざ導入しなくても、現在でも解雇紛争においては金銭による解決は行われており、それなりに合理的な解決が実現している。

現状の解雇紛争の流れ

解雇の金銭解決制度という特別の制度をもたない現状において、どのようにして不当に解雇された労働者が救済されているのか。それは大きく7段階に分かれる。

(1)解雇通告

労働者は、ある日突然、会社から解雇を通告される。「明日から来なくていいよ」と言われたり、「君はクビだから、今すぐ帰りなさい」と言われるなどさまざまだが、とにかく解雇されることで会社から追い出されてしまい、働くことが事実上できなくなってしまう。

(2)労働組合、弁護士等に相談

解雇された労働者は、解雇に納得がいかない場合、労働組合や弁護士に相談をし、解雇が不当であることを訴えて法的措置をとることが検討される。もちろん、多くの労働者が泣き寝入りしている現実があることを忘れてはいけない。

(3)会社に対して、解雇無効、職場復帰を求める通知

解雇に理由がない場合、すなわち不当解雇であると考えた場合、労働者は、会社に対して解雇は無効であるから、いまだに労働者としての地位は失われていないこと、したがって、現時点においても労働者として働く意思を有していることを伝え、解雇を速やかに撤回するよう求める。

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