「解雇の金銭解決」が労働者には不利な理由 使用者側が低コストでクビにできる仕組みだ

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(4)訴訟(地位確認請求)、労働審判を提起

会社側が、それでも解雇が正当だといって譲らない場合は、やむをえず、裁判所に訴えることになる。

この場合、裁判所を使った法的手段としては、①訴訟、②労働審判、③仮処分といった手続きが用意されているが、ここでの説明上は、これらの区別はそれほど重要ではないから説明は割愛する。

いずれの制度も、基本的には、解雇が無効であることから、労働者としての地位があることを裁判所に確認してもらい、解雇通告後実際に働くことができず未払いとなっている賃金(バックペイという)の支払いを求めることになる。

裁判所に対して請求するのは

(5)解雇無効(地位確認)が認められる

裁判所での審理の結果、解雇が不当であり無効であることが認められると、裁判所は労働者としての地位を確認し、未払いの賃金を支払うよう命じる裁判をする。

あくまで裁判所に対して請求するのは、労働者としての「地位を確認」してもらうこと(および未払いの賃金請求)であって、職場に復帰し再び就労できることを請求するという形式にはなっていない。

この点は、有力な異論があるところだが、現在の裁判実務は、労働者に就労請求権(労働者が会社で働くことを会社側に認めさせる権利)は認められておらず、解雇が無効とされ地位確認が認められた場合であっても、使用者が事実上、労働者が職場に復帰することを拒絶してしまえば、それ以上、職場への復帰を強制することはできないとされている(もちろん、不就労はもっぱら会社側の都合によるものなので、その間の賃金は支払われなければならない)。

(6)不当解雇(解雇無効)であることを前提とする和解の交渉

裁判所に解雇の紛争(地位確認請求)が持ち込まれると、どこかの段階で裁判官から必ず次のことを聞かれる。

「復職するつもりがありますか? もし復職を希望しないのであれば金銭解決によって会社側から一定の解決金を受け取って任意に退職するというお考えはありませんか?」と。

これを受けて労働者側はあくまで復職を求めてたたかうか、一定の金銭の支払いを受けて退職をするのか検討することになる。実際のところ、この段階で金銭解決を選択する労働者も多い。

これは、解雇無効が認められたとしても上記のとおり就労請求権が認められていないことに加え、現実問題として、本来であれば解雇は無効であり会社に当然に戻ることができるのであるが、裁判までして争いになった会社にはもう戻りたくないという心境に陥らざるをえなかった労働者側の苦汁の選択として金銭解決が選択されるということである。

ここで重要なのは、解雇が無効であれば元の職場で働くことができるというのが本来の姿であり、解雇された労働者の多くもそれを望んでいる。しかし、現実的には、色々な困難があることからやむを得ず金銭解決による退職を選択しているのである。ここを忘れてはいけない。

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