東芝の解雇無効「6000万円賠償」が示す教訓 元社員はなぜうつ病で長期休職になったのか
約12年にも及ぶ長期裁判を経て、不当解雇を全面的に認める判決が下った。
過重労働を原因とするうつ病により休職していた東芝の元女性社員(50)が、休業期間満了による解雇を不当とし、会社側を相手取って解雇無効や賠償などを求めていた訴訟の差し戻し審の判決が8月31日、東京高裁であった。判決は原告の主張を大筋で認め、東芝へ元社員に対する約6000万円の支払いを命じた。
原告の元社員は1990年に東芝へ入社した。2000年秋ごろから埼玉県の深谷工場において、液晶生産のライン立ち上げに「アレイドライ工程」リーダーという立場で携わったが、長時間深夜残業・休日出勤が続いたうえ、多発したトラブルへの対応などの精神的負荷から、うつ病と診断され、2001年9月から休職。休職期間満了後の2004年9月に解雇された。元社員はこれを不服として訴えを起こしていた。
2000年当時、原告の年収は568万円だったという。2004年の解雇から10年以上が経過したうえでの解雇無効による遺失利益や慰謝料、見舞金などとして、約6000万円という多大な損害賠償額が認められたことが、注目点の一つとなっている。
なぜうつ病につながる過重労働が発生したのか
ただ、なぜうつ病につながる過重労働が発生したのかという点を教訓にしなければ、この問題は単なる個別事例に終わってしまう。私は、事実を詳細に認定した第一審の62ページに及ぶ判決文に目を通してみた。裁判で認定された事実関係に基づいて検証してみると、この一件は一般的な労務管理という観点において、いくつかの問題があったと考えている。4点に分けて整理したい。
第1の問題点は、実労働時間を把握しにくい勤怠管理がされていたということである。
東京地裁は、元社員がうつ病を発症した2001年当時に行われていた、勤務先工場における時間外労働の申告方法を、次のように認定している。
ここまでは問題ない。むしろ、時間外労働を計画的に行おうとする望ましい労務管理の在り方であるが、問題なのは、次のような事実認定もなされているということである。
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