東芝の解雇無効「6000万円賠償」が示す教訓 元社員はなぜうつ病で長期休職になったのか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
・計画で申請した時間外労働時間数を超えても、超過分を勤務表に記載していなかった
・何らかのシステム的な規制により、80時間以上の時間外労働が入力できなかった

未払い賃金以上の問題になり得るサービス残業

すなわち、計画した時間を超える残業は、事後的に申請しにくい雰囲気があり、また、80時間を超える時間外労働は必然的にサービス残業になるという暗黙の了解があった可能性がある。この点、サービス残業というと、未払い賃金のことがよく話題になるが、実際のところ、それ以上に問題なのは「実労働時間がブラックボックス化してしまう」ということにある。

会社は、賃金計算を正しく行うだけでなく、社員に対する安全配慮義務を果たすためにも、実労働時間を把握する義務を負っている。そうであるにもかかわらず、実労働時間を正確に把握できないような仕組みを作ってしまうのは、過重労働者の早期発見ができないということにもつながり、社員に対する安全配慮義務を放棄しているといっても過言ではない。

なお、労働基準法で残業代支払いの対象から外れる「管理監督者」や裁量労働制で働く社員については、労働時間に応じて賃金が支払われるわけではないので、勤怠管理は必要ないと考えている会社も少なくないようであるが、これも大きな誤りであることを指摘しておきたい。

管理監督者や裁量労働制で働く社員に対しても、会社には安全配慮義務があるので、過重労働の防止は必要であり、すなわち、すべての社員に対して会社は労働時間管理を行わなければならない。

第2の問題点は、「根性論」や「事なかれ主義」が過重労働やうつ病の一因として考え得ることである。

東京地裁は元東芝社員の勤務実態の一つとして、ある会議の場面において次のような事実認定を行った。

「参事は、原告に対し、原告の設定した期間を『遅い』と 述べ、スケジュールをさらに前倒しするように指示した。原告は、サンプル作成だけで4日ほど必要であり、電子顕微鏡写真での分析も外部に委託して2、3日ほど必要であるため、3月8日にデータを提出することは不可能であると考え、『前倒しはできません、無理です。』と回答したが、これに対し、出席者らからは何らのアドバイスも指摘もなかった」
次ページ誰もフォローせず
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事