過労死ラインの残業、「違法」と「合法」の境目 ブラック企業「社名公表」初事例から学ぶこと

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帰りたくても帰れない。積み重なると心身に異常を来しかねません(写真:tomos / PIXTA)

「過労死ライン」という概念がある。各地の労働基準監督署が脳出血や心筋梗塞などによる過労死を労災認定する際に、厚生労働省が基準とする時間外労働時間、つまり残業時間だ。発症前の1~6カ月間に残業が月平均で約45時間を超えていたり、発症前1カ月間に約100時間を超える残業があったりした場合などは、過労死との関連性が強いとされている。

行政指導時に社名を公表する新基準の初事例

そんな過労死ラインを超えるような違法残業を繰り返していた会社が、「ブラック企業」として初めて公表された。厚生労働省から5月19日に是正勧告を受けたエイジスだ。

エイジスでは昨年5月以降、千葉県内外の4営業拠点の計63人に月100時間を超える残業や休日出勤をさせた。昨年5月、厚労省は違法な長時間労働が悪質で、複数の都道府県に事業所を持つ大企業が組織的に月100時間超の残業をさせているとみられれば、行政指導時に社名を公表する新基準を設けていたが、今回がそれに基づく初の事例となった。

エイジスは千葉市花見川区に本社を置き、ジャスダック(JQ)に株式を公開する上場企業だ。決算期などに帳簿の数量と実際の在庫を突き合わせて確認する棚卸し業務の代行という分野で圧倒的ナンバーワン。日本全国に50カ所の直営拠点を構え、売上高は約240億円、従業員約700人という陣容だ。創業家の斎藤一族やその資産管理会社などが大株主に名を連ねるオーナー企業でもある。

ところで今回のエイジスの場合は、月に100時間を超える残業が違法となって行政指導の対象となったものの、日本の労働法においては月100時間超の残業であっても、必ずしも違法にならないケースもあることは覚えておきたい。

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