東芝の解雇無効「6000万円賠償」が示す教訓

元社員はなぜうつ病で長期休職になったのか

「参事」というのは、元社員の配属部において部長に次ぐ立場にあった幹部社員ということで、その発言の影響力は大きなものだっただろうと考えられる。元社員が客観的な根拠を述べて、前倒しが不可能であることを伝えているのに、会議の出席者は誰もフォローせず、元社員のプレッシャーは相当なものであったと考えられる。

参事が現場の実態をどれくらい知って発言したのかは分からないが、経営者や幹部社員から現実的に対応が不可能な指示が出された場合には、現場のことが分かる中間管理職がフォローをしなければ、末端で働く一般社員に「しわ寄せ」がいってしまう。その「しわ寄せ」による心労が、うつ病を引き起こすことは想像に難くない。

経営者や幹部社員も、根性論で「とにかくやれ」「何としてでもやれ」ではなく、現場で実際に手を動かしている人の発言に耳を傾けるという方法もあっただろう。数値目標を達成することや、日程を守り切ることも重要であるが、そのために社員の生命や健康が犠牲になるようなことがあってはならない。

過剰な心理的プレッシャーを与えるパワーハラスメント

第3の問題点は、配慮に欠けた指示の出し方が心理的なプレッシャーや過重労働を生み出していた可能性もあるということである。

以下は、東京地裁が事実認定した、元社員が参加していたプロジェクトの調整担当主務とのやり取りの一節である。

「主務は、原告に対し、厳しく叱責し、『ドライが最重要なんだ。どうして報告しなかったんだ。』、『何が何でもデータを出せ。』、『とにかくデータを出せ。今日中に詳細なスケジュールを書いて出せ。』などと要求した。そこで、原告は、同日が明けた翌3月9日午前1時過ぎまでかかって、データ取りを行ったうえ、スケジュールを記載した書面を提出した」

 

前後の事実関係も踏まえると、元社員は与えられた業務をスケジュール通りに行っていたにもかかわらず、会議の2日前に突然本件報告を求められ、対応しきれなかったということである。元社員はこのとき、現場でトラブル対応に当たっていたようであるので、そのような状況の中で「資料を作って2日後に報告しろ」という指示を出すのは、指示の出し方として配慮が足りないといっても差し支えはない。

そして、会議で報告ができなかった原告に対する「何が何でもデータを出せ」というような乱暴な言い方も、過剰な心理的プレッシャーを与えるパワーハラスメントに該当すると言わざるをえない。

元社員も、上位者からそこまで強く言われたら反論することは難しいであろうから、深夜1時まで残業して報告書類を完成させたわけであるが、会社として、深夜1時まで働かせて、内部報告のための報告書を作らせることが本当に必要であったのかという点でも疑問は残る。

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