「はやく」と言わず子どもを動かす魔法の時計 ポイントは「時間の量の見える化」にあった!

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同じようなことは大人でも言えます。ある学校では、職員会議を行うとき、会議室の時計の横に会議終了時刻を表す模擬時計を貼って、そこに「会議終了」という札も貼っています。これによって、会議の参加者がみんな時間を意識するようになり、それぞれが「まだ時間があるな。ここはしっかり話し合おう」「あまり時間がないな。手短に発言しよう」「もうまとめに入ったほうがいいな」などと調節するようになりました。ですから、会議はぴったり時間どおりに終わります。模擬時計がなかったときは、10分、20分、30分と平気で延びていたそうです。このように、大人でも見える化するとしないとでは大きな違いがあるのです。まして子どもにおいては言うに及ばずです。

私は講演の度に模擬時計の話をしてきましたので、それをもとに実践してくれた方々の実践報告もいろいろ聞いてきました。夜の時間帯に模擬時計を活用している家庭もあります。Dさんの家では、「お風呂」「明日の服の準備」「ベッドに入る」「電気を消す」の4つの模擬時計が貼ってあります。また、Dさんは自分用にも、「掃除」「断捨離」「洗濯物取り込み」「犬の世話」「腹筋」などの模擬時計を貼ってあります。紙の色を変えることで、子ども用の模擬時計と区別しています。

Eさんは、初めはリビングの時計の横に「着替え」と「登校」の2つの模擬時計を貼っていました。その効果が大きいことを実感したので、模擬時計を10個に増やしました。ところが、これは多すぎたようで、子どもはどれを見ていいのかわからなくなってしまい、効果が薄くなったそうです。それで、ダイニングに2つ、リビングに3つ、玄関に2つというように分散させました。

デジタルよりアナログを

最後に、実践するに当たってのコツをいくつか挙げます。最近はデジタル時計が増えてきて、アナログ時計が1つもない家庭もあるようです。でも、子育て中の家庭ではアナログ時計がたくさんあったほうがいいと思います。できたら、各部屋に1つはあったほうがいいでしょう。そもそも時間という量は、60進法、12進法、24進法が混在したものであり、子どもにとってけっこう難しいものです。デジタル時計しかなくてアナログ時計に親しむ機会が少ないと、この時間の基本構造がなかなか理解できません。

その結果、時計を読み取ったり時間を管理したりする能力が育ちにくくなります。また、小学3年生の算数で「東京を午前10時56分に出る新幹線は八戸に午後1時53分に着きます。東京から八戸まで何時間何分かかるでしょうか」などという問題が出たとき、かなり苦戦することになります。家にアナログ時計があれば、日々の生活の中で「午前11時30分に家を出て、ファミレスで食事をして2時間30分後に帰宅するとしたら、帰宅するのは何時何分かな?」などと親子で一緒に考える機会が持てます。

また、子どものためを考えると、文字盤の数字がはっきり読み取れるシンプルなアナログ時計がいいと思います。文字盤にゴチャゴチャした飾りや絵がついていると、子どもは数字を読み取りにくくなります。

模擬時計をつくるときも数字と針が大事で、これらをはっきり書くようにしてください。そして、模擬時計は、できるだけ本物の時計と同じ大きさにしたほうがよいと思います。また、数字だけ書いた模擬時計のもとを何枚かコピーしておいて、あとで針だけ描き込むようにすれば効率的です。

この模擬時計によって、「はやく、はやく」と追い立てられる子どもが減ることを願っています。「なるほど」で終わらずに、ぜひ実践してみてください。

親野 智可等 教育評論家

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おやの ちから / Chikara Oyano

長年の教師経験をもとにメールマガジン「親力で決まる子供の将来」を発行。読者数は4万5000人を超え、教育系メルマガとして最大規模を誇る。『「自分でグングン伸びる子」が育つ親の習慣』など、ベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても知られる。全国各地の小・中学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会でも大人気。ブログ「親力講座」もぞくぞく更新中。講演のお問い合わせとメルマガ登録は公式サイトから。Xで毎日発信中。

 

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