一般的に、子どもは大人と比べてはるかに時間を管理するのが苦手です。「あと5分だよ。わかってるの?」と言えば「うん、わかってる」と答えますが、実はよくわかっていません。「5分」という言葉の意味は一応わかっているかもしれませんが、その5分がどれくらい短いのか、自分はどれくらい急ぐべきなのか、そういうことはまるでわかっていないのです。子どもは、大人に比べて時間を扱ってきた経験がはるかに少ないので、仕方がないのです。
そして、もう1つは、時間という量がまったく目に見えない量だということも大きいと思います。量というものは、だいたい目に見えます。長さ、広さ、体積などは目に見えますし、重さにしても見ればだいたいの見当はつきます。でも、時間という量はまったく目に見えない量です。ですから、子どもにとってはとらえどころのない量なのです。
時間の量を見える化する
何かするのに必要な時間の全体量も目に見えないし、それがすでにどれくらい減ったかも、残りの量も、全然目には見えません。そこで、大事になってくるのが時間の量が目に見えるようにしてあげること、つまり「見える化」です。模擬時計もその見える化の1つの工夫なのです。
この模擬時計は応用範囲が広くて、いろいろな場面で使えます。Cさんの家ではリビングの壁の大きなアナログ時計の回りに同じ大きさの模擬時計を4つ貼ってあります。1つは朝の着替えが終わる時刻を表していて、「着替え完了」というタイトルも書いてあります。登校のために家を出る時刻を表す模擬時計には「出発」と書いてあります。学校から帰って宿題を始める時刻の午後5時30分を指す模擬時計には「宿題」と書いてあります。入浴の時刻を指す模擬時計には「お風呂」と書いてあります。
朝など特に忙しいですよね。Cさんも、以前は、朝から子どもに「あと10分しかないよ! はやく、はやく」とか「あと3分だよ! 何やってるの?」などと何度も言っていました。言う度にイライラして声が大きくなり、子どもも反発して「わかってるよ! うるさいんだよ」と言い返し、Cさんも「うるさいとはなに! あなたが遅いから言われるんでしょ」などと言い返し、朝からケンカになることもありました。そして、子どもを送り出してから自己嫌悪に襲われるという日々……。でも、模擬時計を貼ってからは、朝からガミガミ追い立てることは減ったそうです。
また、帰宅後の宿題についても効果があったそうです。本物の時計の針が5時20分、5時25分、と進んでくると、子どもも「もうすぐ宿題やる時間かあ。イヤだなあ」「あと5分だあ」などと言いながらも、何となく心の準備ができるらしいとのことです。そして、5時30分になると諦めがついて、「しょうがない、やるか」という感じで取り掛かるそうです。このように「見える化」されていると、完全に無視することができないのだと思います。「見える化」されていないと、時間がどんなに過ぎても気にならないのですが……。
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