学歴がなくても、世界で活躍する人の真実 伊藤穰一×波頭亮 (上)
一方、日本のインダストリーには、かつて機能していた縦割りのやり方が、今も残っているようです。日本のマーケットが大きく、品質のよい製品を量産する時代はそれでもよかったけれど、マーケットが縮小し、またグローバルを相手にしなければいけなくなると話が違ってきます。日本のインダストリーのプロトコルを、現在のグローバルスタンダードのプロトコルに対応させていく必要があります。
波頭 戦後の日本はすごく特殊な設定でしたしね。物価が安くて、若い労働力がたくさんあって、セキュリティは米国に依存してローコストで、十分に大きな国内市場では日本語が通用する。しかも、米国というキャッチアップモデルまでありました。日本が高度経済成長を遂げることができたのは、こうしたたくさんの要素が組み合わさっていたからです。しかし、あまりにも恵まれた成功体験をしてしまったがゆえに、これでいいんだと思い込んでしまい、変化することに消極的になってしまった。
リスクに報いない、残念な社会
波頭 ベンチャーについてはどうですか。日本で成功を収めたベンチャーというと、楽天やDeNA、GREEなどがありますが、米国のマイクロソフトやGoogleのように、突き抜けた成長を遂げるベンチャーが出てきません。
伊藤 よくいわれていることだけど、日本はリスクテイクに対してあまりリウォード(褒美を与える)しないですよね。そういう環境ではベンチャーは出にくい。もっとリスクをとって、それにリウォードするような姿勢を、特に大企業に期待しています。
波頭 今うまくいっている企業の多くは、オーナー系企業。良くも悪くもオーナーの一存でリスクをとってチャレンジできるからでしょう。ある程度大きなリスクをとってチャレンジしない限り成功しない時代になったのに、日本では社会モデル、あるいは文化モデルとしてそれができていないということですね。
伊藤 日本も米国も同じ資本主義社会だけど、今ではその捉え方に少し違いがあり、その違いが両国のベンチャー企業における差として表れているようです。
資本主義の根底にあるのは人の欲望で、欲望がある人たちが集まるとマーケットが形成され、そこでリソースがうまく分配され、結果的に社会の発展に貢献するわけです。一方、ネットの世界の人たちは欲望というよりも、他人とコラボレーションするのが好き、コミュニケーションするのが好きだからやっている。ネットの根っこにあるのはボランティア精神、だからオープンソースでみんなで共有しようという考え方が出てくる。ベンチャーのファウンダーも基本的には同じです。やりたいからやっている、好きだからやっている。
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