学歴がなくても、世界で活躍する人の真実 伊藤穰一×波頭亮 (上)

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波頭 そうですね。世の中を変えたいからやっているという起業家が多い。

伊藤 そうなんです。米国ではそういう、好きだからやっているベンチャーのファウンダーと、儲けたいという欲望が根本にある資本主義がうまくマッチしている。だから、オープンソースの上にビジネスが乗っかって、ネット起業家やベンチャー起業家にまでお金が回るシステムができているんです。

ところが日本では、こういったネット社会に即した資本主義の循環がまだ機能していないようで、個人とお金が乖離している。そういうところでは、みんなで共有して楽しいことを起こそうとか、社会に役立つことをしようとかいうベンチャー精神は起こってこないんじゃないかな。

波頭 今のお話は、米国のIT企業の変遷を、如実に物語っていますね。かつてIT業界の巨人といえばIBMで、1990年代になるとマイクロソフトが覇者となりましたが、どちらもビジネス動機の企業です。ところが、近年のIT業界の成功企業は、GoogleにしてもFacebookやTwitterにしても、ビジネス動機というより、やりたいことを追求するベンチャー精神が根本にあります。

初めからビジネスモデルをデザインしていたわけではなく、面白そうだからやってみたら、誰か商売のうまい人がマネタイズしてくれて大成功に結びつき、気づいたら莫大な時価総額になっていた、というパターンが少なくない。

こういうのがあったらいいよね、これ面白いよね、というところから新たな試みを展開するのがネットの世界の人たちの動機づけ。そういう動機づけで何かをやる人が、日本では非常に少ないでしょう。そんななかでも「2ちゃんねる」をつくった西村博之さんや「はてな」をつくった近藤淳也さんなどは稀有な例だと思いますが、彼らのような人が1人、2人ではなく、50人、100人と出てくるようになれば、ベンチャービジネスだけでなく日本社会がもっと変わってくると思うのだけれど。

オリジナリティを持った人材をいかに育成するか

社会のなかを変えるような、あるいは産業構造を一変させるような活力ある、そしてグローバルで活躍できるベンチャーを創出するためには、個人が優れたオリジナリティを持たなければいけないと私は考えています。これまで日本では、いい人材というと、人とうまく調和できることが重要視されていました。もちろん、調和能力がなければチームワークを築くことはできませんが、もはやそれは最優先事項ではない。

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