日本人が知らない「睡眠ビジネス」の最前線 世界中が快適な眠りを求めている
マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボといえば、(凡人からみると)奇想天外な未来研究が数多く行われている場所。起業家で科学者でもあるデービッド・ローズの場合、おくるみ、ベッドタイムの読み聞かせ、ハンモックを熱心に研究している。それにラベンダーオイルとコクーン(繭)も少しばかり。
そう、ローズが追求しているのは理想の睡眠環境だ。『魔法のオブジェ――デザイン、人間の欲求、そしてモノのインターネット(原題)』(2014年)という著書もあるローズは、研究室の仲間と、「くるまり感」の高い加重ブランケットを探し、アイスランドのおとぎ話に耳を傾ける。その研究は最終的に、快眠を誘う「ナップポッド」や「新しいタイプの家具」を生み出すかもしれない。
「私の場合、ウィスコンシン州北西部の家の網戸を張ったポーチで、ハンギングベッド(天井からぶら下がったベッド)に寝たときが最高だった」と、ローズは語る。「鳥の声と、もみの木を揺らす風の音。寒いからブランケットを10枚かけてたんだけど、その重みがまたよくてね。いろんなことを試しているよ」。
失われた睡眠を求めて
カリフォルニア大学バークリー校睡眠・神経画像ラボラトリーのマシュー・P・ウォーカー所長は、加齢による不眠の対策として、脳を電気的に刺激する方法を試している。そこでウォーカーが利用しているのは、快眠サポートシステム「センス(Sense)」の利用者から集めた何百万時間分もの睡眠データだ。
センスは、手のひらサイズのポリカーボネート製の球体。柔らかい光がついたときは、北京五輪の会場になった鳥の巣スタジアムの外観に似ている。センスは、寝室の空気の質など目に見えないコンディションを測定して、快眠アドバイスをしてくれる。「ひどく失われた睡眠を人類に取り戻したい。それが私の使命だ」と、ウォーカーは語る。
センスは、イギリスの起業家ジェームズ・プラウドが立ち上げたテクノロジー企業ハロー・インク(Hello Inc.)の第1号製品。ウォーカーは同社のチーフサイエンティストを務めている。