日本人が知らない「睡眠ビジネス」の最前線

世界中が快適な眠りを求めている

パリでは、コンピュータサイエンスのエンジニアであるウゴ・メルシエが音波を研究してきた。その結果、1000万ドル以上を調達して快眠ヘッドバンド「ドリーム(Dreem)」を開発。現在500人のモニター(応募者は6500人もいたとか)に試用してもらっており、この夏の発売を目指す。

オーストラリアの起業家ベン・オルセンもこの夏、快眠リング「シム(Thim)」を発売予定だ。これは指ぬきに似た形のリングで、ベッドに入るときに着用すると、最初に眠りに落ちてから約1時間にわたり、3分おきに着用者を目覚めさせる。この、眠って、目覚めて、を何度も繰り返すと、すぐに眠りに落ちれるようになるのだとか。

シムはオルセンにとって2つ目の快眠グッズだ。最初に手掛けたのは「リタイマー(Re-Timer)」という大振りのゴーグル。その内側についた青緑の光が、着用者の体内時計をリセットするという。オルセンによると、2012年以降、40カ国で3万個が売れた。

質の悪い睡眠によって損なわれるもの

質の悪い睡眠は免疫力や学習力、記憶力を低下させるほか、うつなどの気分障害や精神疾患、さらには肥満、糖尿病、がん、寿命にも影響するとの研究結果が次々と発表されている(睡眠導入剤によって得る睡眠は、睡眠不足と同じくらい有害だ)。

米疾病予防管理センター(CDC)も、睡眠不足を公衆衛生上の懸念としている。良質な睡眠は脳の可塑性を高めることも、ネズミを使った実験でわかっている。これに対して睡眠不足の人は太りやすくなったり、悲しくなったり、気分が落ち込み、死につながることもある。

睡眠不足は経済にも大きな損失をもたらす。ランド研究所は昨年、アメリカの睡眠不足による経済損失は4110億ドルに達するとの試算を発表した。別の言い方をすると、国内総生産(GDP)の2.28%が失われる計算になる。

そこで最近は、社員向けに「スリーピオ(Sleepio)」などの睡眠改善講座を導入する企業が増えている。たとえばリンクトインはこの3月、社員向けにナンシー・H・ロースティン(サーカディアン企業睡眠プログラムのディレクター)による「睡眠フェア」を実施した。

ロースティンはこれまで、『フォーチュン』誌500社に入る多くの企業向けに、睡眠改善プログラムを作ってきた。リンクトインの睡眠フェアでは、ベッドメーキングのやり方を教え、アナログの目覚まし時計を配った。「心と体をリセットする最高の方法は、睡眠だ」と、ウォーカーは言う。

ウォーカーが睡眠コーチの道に入ったのは、前夫のいびきに悩まされていたのがきっかけだった。「医学の世界では、『測定できるものは管理できる』と言われている」。

シリコンバレーをはじめ全米の起業家たちの参入で、「快眠マーケット」の規模は2012年の時点で320億ドルを突破。かつては高級マットレスや製薬会社の独壇場だった領域は、アプリ、ガジェット、そして「快眠の権威」だらけで大混雑していると、ロースティンは笑う。

そこで筆者もいくつかのアイテムを試してみることにした。まずは、メルシエが送ってくれたヘッドバンド「ドリーム」(価格は400ドル前後になる予定)。額と頭頂部に密着するアイテムで、ヘッドバンドというよりヘッドギアに近い。少し煩わしいかもしれないと、メルシエはメモに書いていた。実際の商品は、もっと軽くてスリムになるはずだという。

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