獣や魚がどうなのかは知らない。だが古今東西、老若男女、人が悩み、迷うのは確か。“戦う哲学者”中島義道氏が開く人生相談道場に“同情”はない。ここにあるのは、感受性においてつねにマイノリティーに属してきた中島氏が壮絶な人生経験を通じて得た、ごまかしも容赦もない「ほんとうのこと」のみ。“みんな”の生きている無難な世界とは違う哲学の世界からの助言に、開眼するも、絶望するも、あなた次第である。
※中島義道氏への人生相談はこちらから
今回から人生相談をスタートしますが、初めにお断りしておきますと、「普遍的な見解」など言えるはずもなく、どこまでも私が60年を超える人生において「そうだなあ」と実感したことを中心にまったく「主観的な意見」しか言えません。よって、相談者の方も、読者の方々も、そのつもりで適度に身を離し、冷静かつ批判的に受け取ってください。
哲学にずっとかまけていると身にしみてわかるのですが、実は人生に起こることは何でも、ただの1回きりのことです。それぞれの人の人生はまったく固有であって、ほかのいかなる人生とも違っている。似ている人生はありますが、同一の人生はありません。よって、「不登校」といっても千差万別、その原因も千差万別であって、原因が膨大な数に及び、そのほとんどを私は知らない。よって、きわめて限定された情報からお答えすることは、実はとても危険なことであり、本当に誠実でありたいなら(私はそうありたいと願っています)、答えてはならないのです。
しかし、こういうことを承知のうえで他人の人生相談を引き受けたのにはわけがあります。こういうネット上(あるいは雑誌上)の人生相談とは、個人的相談とは違って、読者の方々がいて、相談と回答を「自分に引き寄せて読む」こともその目的のひとつであることを知っているからです。たとえ相談者には満足してもらえない回答でも、ほかの読者たちに何かのヒントになるかもしれない……。そう思って、この困難な役柄にあえて挑もうという次第です。
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