子どもは親の虚栄心を見抜いている!

娘が勉強せず、不登校。どうすればいいですか?

とはいえ、その具体的仕方は、相談を受けている人の境遇を、自分の人生、あるいは自分が見聞した他人の人生と重ね合わせて答えるしかありません。ほかの人生相談者とは(たぶん)違って、私はこの人生相談において、つい物知り顔に、あるいは人生の先輩面をして、あるいは「哲学者面(?)」をして、相談者を(一時的に)喜ばせようとのもくろみで、あるいは(一時的に)慰めようとのもくろみで、さらりと美辞麗句を並べて答えてしまうことを、最も戒めたいと思います。

それでも生きていかねばならない

以上を踏まえて、今回のご相談を読んでみますと、差し当たり不登校の原因はとても明瞭に見えます。すなわち、中高一貫校において、高校3年のときに、特別進学クラスから一般クラスに「落ちた」ことです。私の経験からすると、われわれは人生において明確な目標を持っていればいるほど、その目標が得られないと、あるいは遠のくと、人生にほかに何の目標も見いだせなくなって、生きる気力を失います。たぶん、娘さんの不登校(あるいは「ひきこもり」)の原因は、これからの人生の「かたち」が見えなくなっているのだと思います。

それでも、ほとんどの人は生きていくのですが、とくにまじめな人、繊細な人(相談者も娘さんもそのような感じがします、そして私もそうでした)は、人生の「かたち」、しかも自分が価値あると認める「かたち」が描けなければ生きていけない。こういう場合、「とにかく学校に行ってくれればいい」という表面的かつ即席的治療ほど有害なものはない。親子協力してすぐに次の目標を見つけて、「そうだ、この方向だ!」と走り出すことは、たぶん根本的解決にはなりません。何かのちょっとしたハズミで走れなくなったら、また娘さんはそこに立ち止まってしまうでしょう。では、どうしたらいいのか?

(あくまでも推測ですが)娘さんはとてもまじめなので、今、部屋に閉じこもって「これまで」の人生を根っこから堀り起こして、いろいろ考え続けているのではないでしょうか? それは、これまで考えもしなかった疑問、すなわち中高一貫校に入ったこと、そこで有名大学入学を望んでいたことは、はたして「自分の本当の目標」であったのか? もしかしたら、親の希望に合わせていただけなのかもしれない、と問うているのかもしれません。だが、この年齢の子どもは、「いい子」であればあるほど、自分の希望と親の希望との区別がつかない。親の希望をすなわち自分の希望だと思い込んでいることがよくあります(私もそうでした)。ですから、その目標を「変える」のは、(「いい子」であればあるほど)「親の期待に沿わない自分を責める」という形をとってしまいます。

ということは、(私の主観的意見によると)不登校やひきこもりの真の原因は子どもたちの「うち」にあるのではなく、子どもに対する親の態度にあるのです。子どもが不登校になったりひきこもると、親たちは「困った、困った」と言いながら、「子どもには何の高望みもしない」と言いながら、「私は子どもの自主性を認める」と言いながら、あらゆる仕方で子供を縛っていることがあります(立派な親であればあるほど)。それを子どもは感づいているのですが、親が「あなたの好きなように生きなさい」と言っても、「いい子」はやはり親の言外の隠された「本当の」期待に沿おうとする。そして、苦しみ悩むのです。

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