FB幹部が伝説のサーフブランドを救ったワケ いつまでも「昔のまま」であってほしい
サーフィンやウォーキング用の男女のボードショーツのほかにも、バードウェルはシャツやバッグ、帽子、ジャケット、タオルなどを売っており、もちろんどの製品にもビーチを感じさせるビンテージの雰囲気がある。
「相対的にいえば、バードウェルは当社にとって大きな事業ではない。しかし、顧客にとっては重要なブランドで、毎年売り切れる」と、J.クルーのドレクスラーは話す。
バードウェル・ビーチ・ブリッチズの創業は1961年。キャリー・バードウェル・マンのリビングルームでスタートした。彼女が作ったのは、ナイロンを2枚重ねしたサーフィン用のショートパンツだけだった。商品注文用のカタログは、コピー機を使って作られていた。1964年にはマイク・ソールズベリーがロゴを作成。ソールズベリーは、リーバイスやMGM、マイケル・ジャクソンなどのデザインを担当した実績がある人物だ。
やがて、バードウェルのショートパンツは、特にサーファーの間でカルト的な人気を博するようになる。1着は何世代にもわたって着られるほど頑丈で、ユーザーは父親や祖父のボードショーツがまだ健在である写真を送ってくる。
しかし、バードウェル家は次第に、事業を拡大する意欲を失っていく。生産量は1970年代がピークだった。
ジェイコブソンが買収した頃には同社の製作所は1つだけで、稼働日数も繁忙期に週4日、需要が少ない時期は週1日だけだった。インターネット上にはほとんど情報を出さず、製品デザインや品ぞろえもめったに変えなかった。
ジェイコブソンの友人で、現在バードウェルの共同オーナー兼クリエーティブディレクターであるナタス・カウパス(彼は半ば引退しているがプロのスケートボーダーでもある)は、昔を思い出してこう話す。バードウェルのウェブサイトで買い物をしようとしたら「3つめのステップは、電話をかけることだった。買うのにはとても苦労した」。
昔ながらのブランドに産業革命
ジェイコブソンのまた別の友人のジェフ・クロウソンは、2016年にフェイスブックを辞めてバードウェルのCEOになった。
新しいオーナーたちは、バードウェルに産業革命をもたらした。最初に力を入れたのは、卸売りから消費者への直接販売に切り替え、顧客との主な接点となるウェブでのプレゼンスを築くことだった。いまでは、同社はインスタグラムとフェイスブックのアカウントも持っている。
次に、リーン生産方式の考え方を念頭に、生産を行う場所も設計しなおした。以前は、バードウェルのボードショーツは、1人の従業員が1つずつ縫っていた。しかしいまでは、従業員は必要に応じて、日ごとに異なる作業を順番に担当する。
クロウソンは言う。「毎日、リーン生産方式とリーンマネジメントから学んでいる。プロセスからムダをなくし、すべてをより効率的にしている。従業員が実際にどのように仕事をするかを調整し、業務の近くに従業員を配置するようにしている。そうすることで、生産時間が何秒か短縮でき、最終的にはより多くの製品が作れるようになる」。