20代女性を虜にするアパレルブランドの正体 マッシュホールディングスは何がスゴいのか
「若い女性の好みが把握しにくくなった」とアパレル業界で言われるようになって久しい。現在20歳の1996年生まれの出生数は120万6555人で、43歳の1973年生まれは209万1983人。単純に人数がほぼ半減しているから、大きな固まり(流行)が見えにくいというのはあるが、それ以上に情報と選択肢がたくさんありすぎて、おのおのの「カワイイ」が分散化している現状がある。ゆえに、売れるブランドや商品を企画するのが、これまで以上に難しいのだ。
そんな中にあって、20~30代女性の心をわしづかみにし、年率2ケタの勢いで業績を伸ばしているアパレル企業がある。「スナイデル」など複数のレディースのファッションブランドを中心に展開するマッシュホールディングスだ。2016年8月期の売上高は581億円と、前年比21%拡大。80店舗の出店投資と本社移転の投資が重なり、営業利益率こそ2015年8月期の12.3%からマイナスとなったものの、2017年8月期は売上高700億円を見込む。ヒットブランドや商品が生まれにくいと言われている時代に、どうやって女性の消費欲をかき立てているのだろうか。
「経験なし」「人脈なし」でアパレル業へ進出
マッシュはもともとコンピュータグラフィックス(CG)を手掛ける企業として1998年に創業し、2005年にアパレル業へ進出した。「CGで培った表現力やデザイン力を生かして、手持ちの資金で始められる事業はないか、と考えた末に思いついたのがアパレルだった」と近藤広幸社長は振り返る。
当時は、雑誌『CanCam』などに掲載されるいわゆる“赤文字系ブランド”と、SHIBUYA109に代表されるギャル系のブランドの2つが強かった時代。赤文字系、ギャル系、モード系など、カテゴリが明確にすみ分けされていたが、近藤社長は、その隙間で勝負できないかと考えた。
そして立ち上げたのが、“ストリートフォーマル”というコンセプトの下、ストリートのカジュアルさに女性的なテイストを加えたブランド、「スナイデル(snidel)」だ。
展示会もせずに、いきなり表参道の裏通りに1号店を出店したが、鳴かず飛ばずで1年後に渋谷マルイへ移転。移転後もしばらく低空飛行が続いたが、半年後、レースのトップスにヒョウ柄のコートを合わせた甘辛ミックスなコーディネートが評判となり、爆発的に売れ始めた。男性目線の“モテ”ではない、女性自身が「カワイイ」と思えるファッションを提案する『sweet』など青文字系雑誌の時代が到来し、そうした流れにいち早く対応していたスナイデルは、“青文字川”の流れにうまく乗ったのだ。
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