20代女性を虜にするアパレルブランドの正体 マッシュホールディングスは何がスゴいのか

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さよう、マッシュのブランドは総じて高くない。たとえば、スナイデルの場合、ワンピースは1万~2万円台、ニットも1万円台と20代女性にも手が届きやすい価格設定となっている。ジェラートピケのモコモコ素材のパーカー、ショートパンツ、ソックスの3点セットは1万3000円ほど。ユニクロと比較してしまうと高いかもしれないが、愛着の持てる部屋着としては十分すぎるくらい安い。生産は中国を中心としたアジアが大半を占めるが、素材や縫製には決して手を抜いていない。つまり「価格に対して高い価値の商品を提供できている」わけだ。

原価率の水準は業界随一の高さ

もともと東京スタイルが利用していたビルが、マッシュホールディングスの本社だ(撮影:今井康一)

アパレル製品の原価率は、原料や素材や縫製工賃が一様に上昇しているにもかかわらず、一時期より大幅に低くなっている。大手アパレルの原価率は、平均的に10%台後半から20%台前半と言われていて、ハッキリ言えば価格に対して価値が伴っていないものが多いのが現状である。近藤社長は「原価率の高さが必ずしも価値につながるわけではない」と謙遜するが、マッシュの原価率の高さは業界では最高水準にある。

「この10年、スナイデルは十分な利益を生んでいますが、原価率は30%台後半と高い水準で推移しています。もちろんこれでいいとは思っていません。社員の能力や技術が向上して質を落とさずに無駄を省けるようになった分を、縫製工賃や素材の高騰、為替などの問題が積み重なって、相殺してしまっている形です。価格に対して価値の高いモノを提案するのは大前提ですが、今まで培ってきたものをさらに精査して、将来的には同じクオリティで30%台前半まで下げたいと思っています」

もっとも、価格に対して価値が高いモノを提案しても、それだけでは売れないのが今の日本である。原価率が高くて利益率が高いということは、つまり、定価で売れることが多く、売れ残りが少ないということ。この背景には、新たなカテゴリーを時代に先駆けて提案し続けているだけでなく、女性デザイナーが「作りたい!」「カワイイ!」と心から思えるものを作れる環境が整備されていることがある。

「若い女性が欲しいと思うものを作れているいちばんの理由は、アイデアを出しているのが女性で、女性に寄り添ったモノ作りをしているから。デザイナーが自分でも着てみたいと思ったものを形にできれば、こんな時代でもお客様はちゃんと反応してくれます」

また、マッシュは中国でも存在感を増しつつある。2000年代に入ってから、日本の大手アパレルは中国を中心とした東アジア市場に攻勢をかけたが、そのほとんどは、利益を生み出すまでに至っていない。そうした負け戦が常態化している中で、マッシュはちゃんと儲けているのだ。2016年5月末時点で、中国事業は149店舗(うちスナイデルが112店舗)まで拡大。2年前に投入した「ミラ オーウェン(Mila Owen)」も37店舗まで増え、第2のスナイデルに育てている最中だ。

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