FB幹部が伝説のサーフブランドを救ったワケ いつまでも「昔のまま」であってほしい

同社が最近改築した約930平方メートルの製作所は、明るく清潔だ。中央には何列もミシンが並んでおり、壁には裁断用の大きなテーブルが取り付けられている。後ろの壁は万華鏡のように色とりどりだ。明るい色の布地が何本も、きっちりと並べられているのだ。
効率についてのクロウソンの考え方は、ソフトウエア開発における彼の20年のキャリアに源がある。ボードショーツとソフトウエアにはまったく関連性がないように思えるが、そうではないとクロウソンは言う。
「人はいわゆる『フロー状態』に入る。つまり、(集中して)ある一定のスピードでものを作り始めて、邪魔されたくないような状態だ。この会社では、縫製のフロー状態ということになる。これは本当にソフトウエア開発に似ている。エンジニアはよく『プラグイン』していると言う。これは、エンジニアがヘッドホンをつけて課題を解決しようと集中しており、『ランチはどこに行きたいか』などと話しかけられたくないような状態だ」
エンジニアが取り組む課題は、たまたま知的でバーチャルなものだが、「一方でバードウェルでは、たいていは実際の製作上の課題だ」。
バードウェルのオーナーたちによると、同社は生産とマネジメントの改革のおかげで、売り上げと利益を急速に拡大しているという。クロウソンによると、2016年の売り上げは「100万ドル台の中間あたり」だという。
「昔と変わらない」感じを保つ
元ソニー・エンタテインメントCEOで、現在はスナップ(「スナップチャット」アプリの運営会社)の会長であるマイケル・リントンは、バードウェルの昔からの顧客で、いまでは同社に投資もしている。リントンはインタビューで、「現在のオーナーはこれまでのブランドの形に忠実であり続けていて、それが賢明なところだ」と話した。
「いまオンラインで注文しても、おなじみのバードウェルの箱で届けられる。私が電話で注文していた頃と同じようにだ。いまではずっと効率化されているが、奇妙なことに、何年も前と同じような感覚が維持されている」
バードウェルを最初に買収したジェイコブソンだが、彼はまだマンハッタンビーチに住んでいて、サーフィンも続けている。バードウェルを着て父親と一緒にサーフィンをした夏の思い出も、いまだに鮮明だ。
「ひと夏に1着。それで十分だった」とジェイコブソンは言う。「漁師が着るオーバーオールのように、夜ベッドに入るときにはそこに脱ぎ捨てて、朝一番にまた着る。本当に頑丈なんだ」
(執筆:Eilene Zimmerman記者、翻訳:東方雅美)
© 2017 New York Times News Service
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