新社会人が慌てて保険に入るべきでない理由 営業マンの勧誘攻勢に即応してはいけない

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勤務先の健康保険組合によっては、通常の給付に上乗せして「付加給付」を行うところもあります。高額療養費制度に付加給付があり、1カ月の医療費負担の上限は2万円で、傷病手当金も1年半ではなく3年間支払われるような組合もあるのです。確認が不可欠です。

健康保険同様に重要なのが、「厚生年金保険」です。「現在、年金生活している人のためにおカネが引かれる制度」という認識では不十分です。加入者(あるいは受給者)が死亡したときに配偶者や子に支払われる「遺族年金」があるからです。会社員の場合は、遺族基礎年金と遺族厚生年金が合算されて、遺族に支払われます。

あらかじめ「死亡保険」に加入しているようなものです。それも少額ではありません。35歳の妻と5歳の子供が1人いる40歳の会社員が急死した場合で、それまでの年収の平均を400万円として試算すると、妻が平均余命を全うするまでの年金総額は4500万円を超えます。

筆者がこのケースで民間の保険を利用するとしたら、子供が大学を卒業するまでの期間限定で死亡保障を足す程度にとどめるでしょう。

勤め先によっては民間の死亡保険は不要

勤務先によっては、福利厚生制度として「死亡退職金」「弔慰金」「育英年金」などを用意しているところもあります。大手企業では、国の遺族年金と合算すると、民間の死亡保険は不要と思われるケースもあるのです。

加えて、死亡や入院等に備える場合、特定の企業や業界団体向けに案内されている「団体保険」や、業界団体独自の「共済」制度などのほうが、民間の個人向け保険より格安であることが多い、と認識しておくといいでしょう。

「健康保険」の保障内容などを知りながらも「国の保障は、今後、緩やかに削減されていくだろう」「若いうちは保険料も安い、病気をしてからでは遅い」といった理由から、民間の保険への加入を勧める向きもあります。

こうした指摘についても、常識で考えたらいいと思います。確かに、国の保障が削減されていく場合、相対的に民間の保険への期待は大きくなるでしょう。とはいえ、期待の大きさと商品の品質には何の相関もありません。国の保障制度への「不安」を意識することで商品の評価が甘くならないか、などと想像してみるほうが大切でしょう。

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