「高まるリスクに保険で備える」は、どこかおかしい
テレビや雑誌などで医療保険の広告を見ていると「高まるリスクに保険で備えましょう」といった文言がよく出てきます。一見すると当たり前のように思えるこの言葉、実はよく考えると、とんでもない論理矛盾が隠されています。
そもそも保険というのは、何のためにあるのか、ということを考えてみます。それは滅多に起こらないけど、もし起こったら自分の蓄えではとてもまかなえないことに対処するためです。重要なキーワードは、“滅多に起こらない”ということです。滅多に起こらないことだからこそ、安い保険料で万が一の時の保障が手厚くもらえるのです。
頻繁に起こることであれば、保険料というのは高くなってしまいます。これは生命保険に加入する時点での年齢に応じて保険料が高くなることからも、おわかりだと思います。つまりリスクが高まることに対して、本来、保険はあまり向いていないのです。
これは損害保険を例にとるとわかりやすくなります。自動車保険に加入する場合、対人の場合は金額が無制限ですが、それほど保険料が高いわけではありません。
一方、車両保険の場合はかなり保険料が高くなります。これは当然です。人身事故というのは滅多に起きることではありませんが、車庫入れや狭い道でこすったりすることは、割とよくあるからです。したがって、中には車両保険自体には入っていない人もいますし、入っていても免責額を高くすることで保険料を安くする、すなわち少々こすったぐらいであれば自分のおかねで修繕できるので、高い保険料を払うのはもったいないと考える人がいても当然のはずです。
ですから、高まるリスクに保険で備えましょうというのは、自動車保険で言えば「車庫入れでこすったりすることはよくあることだから、高い保険料を負担しても保険には入っておきましょう」と言うのと同じことなのです。
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