アメリカの起業家精神はこうして育まれた

レモネード・スタンド、民間の危機意識、政府の目覚めという話

エンジェルがエンジェルを呼びアイデアが実現する

スタートアップを起こす際、資金がなくてはどうしようもありません。伝記などを読んですでに知っている人もいると思いますが、ここではアップルを題材にしてみましょう。元にしているのは創業者スティーブ・ジョブズの自叙伝です。(ウォルター・アイザックソン著『スティーブ・ジョブズ Ⅰ』講談社)

『スティーブ・ジョブズ』(2011年、講談社)

創業者であるスティーブ・ジョブズ、スティーブ・ウォズニアック、ロン・ウェインがアップルを設立したのは1976年4月1日。ビジネス形態として先に紹介したSコープなどの株式会社ではなく、パートナーシップという形態でした。

創業者である彼らは事業リスクを全面的に負うことになったため(そうしたパートナーをジェネラル・パートナーといいます)、尻込みしたウェインはアップル設立から11日後には退任手続きを取ってしまいました。

さて、彼らが会社を起こそうとしたのは、今ではアップルⅠと呼ばれるコンピュータの基盤回路を売るためでした。ウォズニアックは自分の電卓を売り、ジョブズは後に買ってくれた相手に修理代を負担しなければならないほどの代物だったフォルクスワーゲンを売り、貯金も投入して、運転資金の1300ドルを調達したといいます。

このように、スタートアップ時に創業者が自分で資金を用意することを「ブートストラップ」と呼びます。勤務している会社を辞めずに生活費を稼ぎながら、並行して新しいビジネスを行うことも「ブートストラップ」の1つです。

ジョブズらはアップルIを売り込むため、「ホームブリュー・コンピュータ・クラブ」という自作コンピュータを趣味とする人々のサークルで投資家相手にプレゼンテーションを行いますが、参加者の受けは全般的によくありませんでした。しかし、あるコンピュータ・ショップを経営しているポール・テレルという人物が興味を示し、後日、アップルⅠを1台500ドルで50台購入する意向を示してくれました。

また、彼らが事業を拡大する際には、マイク・マークラ、かつてインテルで働いていて、インテル株式公開の際にストック・オプションで巨万の富を得た人物が、アップルの株式会社化と、その株式の3分の1を交換条件に、25万ドルの信用保証を提案してくれました。

スタートアップ企業を支援するこうした個人のお金持ちを「エンジェル投資家」と呼びます。

さらに、著名で、ほかのエンジェル投資家から資金を集めるためのきっかけになる投資家――たとえば、グーグルに初めに目をつけて出資したチェリトンとベクトルシェイムのような――は、「ベルカウ」(鈴をつけた牛)とも呼ばれます。

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