アメリカの起業家精神はこうして育まれた レモネード・スタンド、民間の危機意識、政府の目覚めという話

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「無限責任」を負うと、かえって信用を得るのが難しい

しかし、ビジネスをある程度大きくしていくと考えれば、無限責任を負う個人事業主は適当ではありません。無限責任を負う個人事業主は金融機関や取引先からの信用を得るのが難しいともいわれています。複数の仲間と始めるパートナーシップを選ぶにあたっても、無限責任という点を慎重に考える必要があります。

一方、有限責任のビジネス形態を選ぶなら「株式会社」と「リミテッド・ライアビリティ・カンパニー」(LLC)の2つがあります。この記事では詳しい説明を省きますが、LLCは、パートナーシップとコーポレーションの中間的な性格を持つビジネス形態です。

ちなみにアメリカでは普通の株式会社を設立するのに必要な最低資本金の決まりがありません。18歳以上のアメリカ人なら、1ドルあれば最高経営責任者(CEO)になれるわけです。

理不尽な「二重課税」を回避するには?

第2の課題としては「税金、特に利益が出た場合の配当への課税に耐えられるか」、それに関連する第3の課題として「ビジネスをどれだけ大きくするか」ということがあります。

普通の株式会社では、利益が出たところで法人税を払わなければなりません。税引き後の利益から株主に対して配当を支払うわけですが、スタートアップにおいては、普通、創業者(経営者)も自分の資金を提供して株主になっています。配当を受け取ると、今度は経営者個人の所得として個人所得税の課税対象になります。生み出した利益は1つなのに、二度も課税されるわけです。これを「配当の二重課税問題」と呼びます。

スタートアップ企業が利益を出せたとしてもほんの小額でしょうから、二重課税は大変な負担になります。税によって資金が外に出てしまうので、仕入れを増やしたり、コンピュータを購入したりといったビジネスの拡大が難しくなってしまいます。

「配当の二重課税問題」を回避するための選択肢としては、特別な株式会社「Sコープ」の設立とLLCがあります。

この2つの形態ではいずれも、利益には課税されず経営者の個人所得の一部として配当だけに課税されます。元来パートナーシップに認められた仕組みです。

実は、二重課税の問題は単に「中小ビジネスの課税負担が重い」という点にとどまりません。望ましい税制のあり方としても「配当の二重課税」はやめるべきだといわれています。ただそうしてしまうと財源が減ってしまいますから、財政当局の反発は強いのです。

次ページスタートアップを資金の出どころ:S.ジョブズのケース
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事