欧州に渡った難民の知られざる過酷な生活 戦火を逃れても厳しい生活が続く

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ジーンズを縫う、シリア難民のマフムード・オマル。自国では仕立て職人として15年以上働いた経験を持つ(写真: Ilvy Njiokiktjien/The New York Times)

ここはオランダの首都アムステルダムにある、かつての刑務所の建物を利用した難民の居住施設だ。地下の作業場では、マフムード・オマル(28)がミシンに向かい、人気ファッションブランドのジーンズを縫っている。シリアで仕立て職人として15年以上働いた経験をもつオマルは、手早く1本縫い終えると次を縫い始めた。

この仕事は、難民の職探しに協力しているオランダの団体「リフジー・カンパニー」がお膳立てしたものだが期限付きだ。だが内戦のさなかの故郷アレッポから脱出して2年、毎日通うところがあることだけでも救われた気分だと彼は言う。

「(オランダ社会に)早くなじむには働くことが欠かせない」とオマルは言う。まだオランダ語はうまく話せず、それがフルタイムの仕事を見つける障害となっている。「できるだけ早く独り立ちしたい。そうすれば自分を受け入れてくれたこの国にお返しすることができる」

100万人以上の移民が欧州へ

2015年に中東・アフリカ地域から紛争や貧困から逃れて欧州に流れ込んできた人々の数は100万人を超える。彼らを同化させる最も早い手段として各国政府が目を付けたのが労働市場だった。仕事に就くことができれば、政府の援助から抜け出せるし、経済にも貢献してもらえるというわけだ。

だが、難民が安定した仕事を見つけるのはなかなか難しい。言葉の壁もあるし、技能面でのミスマッチも大きな問題だ。きちんとした就業経験のない難民もいれば、プロとしての技能や資格、学位があるのに認めてもらえない例も多い。

そこで欧州各地で民間団体が支援に立ち上がった。これらの団体ではプロとしての技術をもつ難民に仕事を斡旋したり、雇用に必要な技能を伸ばすための支援を行ったりしている。冒頭のリフジー・カンパニーもそのひとつだ。

「最初から人々と仕事を近づけるような取り組みができれば最高だ。長い期間待たされるなんて時間の無駄だからだ」と語るのは、シリア出身の起業家でリフジー・カンパニーの常務理事の1人、ジハード・アサドだ。

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